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2/12 平昌 選手村 No.2

 

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「ほんとに?」

「絶対ない! ただのお兄ちゃんだから!」

「絶対に?」

「絶対!」

「100%?」

「100%! 絶対! 地球が滅亡しても! ない! これで満足!?」

歩夢くんがあまりにもしつこく聞いてくるので、私はやけくそ気味にそう叫ぶ。

すると歩夢くんは、顔を上げて口角を上げ、やっと少し微笑んだ。

「……ん、満足」

その微笑みはいつものようにやはりかっこよかったのだけれど、どこか可愛らしさも感じて。私はキュンとしてしまった。ーーなんていうのかな、母性本能を刺激された、とでもいうのか。

「そ、そんなに私にいてほしいの?」

そして少し調子に乗った私は、からかうようにそう言った。からかうのに慣れていないから少し噛んでしまったが。

で、「そんなことないから」とか「別にそういう意味じゃないし」とか、珍しく歩夢くんの照れたり慌てたりする姿が見れるかなあと思ったのだけれど。

「いてほしいよ」

歩夢くんは怯むことなく、私にそう言った。私を真っ直ぐと、あの澄んだ瞳で見つめながら。

どストレートに真っ向から言われて、私はあっという間に赤面してしまい、俯く。いつもの仕返しにおちょくってやろうと思ったのに。どうやら私は歩夢くんには、敵わないらしい。

「そ、そんなこと……」

「いてよ」

「な、なんで……」

「だって。……なんでもしてくれるんでしょ?」

そう言うと、歩夢くんは瞳に少し切なそうな光を混ぜた。

「なんでもしてくれるんなら。ーーいてよ。俺のそばに」

ーーなんでもするから、と私は確かに言った。だけどそれはその言葉を言った時に思った通り、筋トレのサポートとかストレッチの補助とか、あるいはごはんを奢るとか、どこかに遊びに行くとか、そんな軽いことを考えていたのだ。

まあ、もしかしたら歩夢くんがまた変なのことをしてくるかなあという不安はあったけれども。

ーーだけど、歩夢くんは。

「……そんなこと、こんな回りくどいことしなくても」

私は斜め下方に視線を落として、照れを隠しながら口を開いた。

「べ、別にそのつもりだって、昨日言ったじゃん……」

小声で私は言う。そして恐る恐る歩夢くんの方を見ると。

「ーーなら、よかった」

爽やかに私に向かって微笑んで、言った。その屈託のない、少年の笑顔を見て、私はいまだに照れながらも、自然に笑みがこぼれてしまった。

いつからなのだろう。気づいたら。いつの間にか。

私は自分と歩夢くんとの間に、マネージャーでも、通訳でもない、もっと特別な繋がりーーそ正体は、よくはわからないけれど。

一緒にいなくては、ダメなような。離れてしまうと、自分のすべてがダメになってしまうような。ーーそんな何かを、彼との間に、無意識のうちに感じるようになった。

しばらく言葉が出なくて、沈黙が場を支配する。歩夢くんは、ただじっとまっすぐと、私を見つめていた。そのまま見続けいたら、彼に心の奥底まで支配されそうで、私はたじろぐ。

ーーな、なんか言わなきゃ。

私は慌てて口を開いた。

「で、でもよかったー」

「え? 何が」

「だってさー、「なんでもする」なんて言っちゃったからさー。これ言った時の歩夢くんの感じだと、またキスとか抱きついたりしてく……ると……」

言いながらはっとする私。ーーまずい。

せっかくそういう流れじゃなかったのに! こんなことを言ったら、そういう感じ、に……。

「……ふーん」

すると歩夢くんは、私との間にあった隙間を詰めて、太ももが触れるくらいの至近距離で座り直した。

「なんだ、期待してたの?

そしてお互いの匂いを感じてしまえるような、目と鼻の先まで顔を近付け、甘い声で彼は言った。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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