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2/12 平昌 ハーフパイプ会場 No.1

 

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世界ランキング1位、スノーボードハーフパイプ男子金メダル候補の平野歩夢は、今日も美しくダブルコーク1440を決めていた。

昨日の悪天候とは打って変わっての、晴天。澄み切った青空を背景に、五輪公式の白いウェアを纏った天才は、壮絶なこれまでの努力を全く感じさせないように、柔らかに技を決めていく。

Xゲームの時の黒いウェアは歩夢くんらしくて格好よかったけど、白も爽やかで似合うなあ、と思う。

そんな歩夢くんは今日も相変わらず絶好調。1440の連続技は、危険だから練習ではあまりしないけれど、単発でもこれほどまでの成功率なら、きっと本番で連続技を決められるだろう。

そんな彼を、パイプのプラットフォームに立って見ながら、私は嘆息をする。

ーーあーあ。昨日勢いで馬鹿とか大馬鹿とか変態とか、いろいろ言っちゃったなあ。

反省していた。いきなり押し倒してきたり「羽生くんのとこ行くの?」とわけのわからないことを歩夢くんが言ってきたので、頭に血が登ってしまったのだ。

まったく本当に歩夢くんって意味がわからない。一体何がしたいんだろ。

だけど、昨日はさすがに言いすぎた。しかも言いっぱなしでそのまま別れてしまったし。

その後すぐにLINEで謝ろうかとも思ったけれど、うまい文面が思いつかず、そのまま寝てしまい、今に至ると言うわけである。

歩夢くんとは、昨日私が暴言を吐いてから、2人で話していない。常に周りに誰かがいて、なんとなくそういう雰囲気じゃなかったのだ。

ーー怒ってるかなあ。私はぼんやりハーフパイプの練習風景を見ながら考えていた。あの勢いのある回り方は來夢くん。荒削りだけどそこが魅力的なのが優斗くん……あれ、歩夢くんはどこ行った……?

と、私がパイプ内を見渡していると。

、水ちょうだい」

「………うわあ!?」

不意に耳元で歩夢くんの声がした。振り返ると、彼は昨日のことなど何も無かったかのような、平然とした面持ちで傍らに立っていた。

どうやら怒っていないみたい。とりあえずよかった。

「は、はい」

私はミネラルウォーターのペットボトルを歩夢くんに渡すと「さんきゅ」と言って彼はそれを受けり、少しだけ飲んで私にペットボトルを返してきた。

私はボトルを受け取ると、意を決して口を開いた。

「あの、歩夢くん……」

「んー?」

歩夢くんは少し笑って私の顔をのぞき込む。なんか知らないけれど、機嫌が良さそうだ。って、いちいち至近距離で見てくるの、毎回やめてほしい。ドキドキする。

「き、き、昨日、ごめん……」

「何が?」

「馬鹿とか、いろいろ言っちゃって……」

ーーいいよ別に、気にしてないから。

なんだかんだ言って優しい歩夢くんだから、私はそう言った答えをどこかで期待していた。だが、しかし。

「それね。あー、俺傷ついたなー」

「えっ……」

思いもがけない彼の返答。う、やっぱり言いすぎたのかな。

「ご、ご、ごめん! なんか、その……血がのぼっちゃって……」

「ふーん。でもさ、変態はないでしょ」

「う……ほんとに申し訳ないです……」

私はただ平謝りだ。馬鹿、大馬鹿、変態、アホ、とか言ったっけ……我ながら酷いな。

「……許してよぉ」

「どうしようかな」

「な、なんでもするから!」

歩夢くんに許してもらいたい一心で、私は慌ててそう言ってしまった。

ーーなんでも? あれ、それなんかまずくない?

ただでさえキスしてきたり抱きついてきたりする歩夢くんに、それは。

言ったあとにそう気づいた私だったが。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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