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2/8 平昌 ハーフパイプ会場 No.1

 

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平昌のハーフパイプ会場はひどく寒かった。アスペンもXゲーム決勝の日は極寒だったが、それとはまた種類の違う寒さに思えた。体の内側まで容赦なく侵入してくる、いわゆる底冷えする寒さ。

寒さに慣れているはずの歩夢くんたちも、会場に辿り着いた途端、「ここは寒いね」と、みんなで言っていた。

しかしそんな中でも、歩夢くんは雪を簡単に味方につける。

青く澄み切った空をバックに、歩夢くんはダブルコーク1260、エアメランコリーグラブなど次々に華麗に技をメイクした。

私はその美しい空中浮遊の瞬間を少しも逃したくなくて、カメラを片手にパイプの終わり、RUNを終えた選手がボートを止めるスペースに待機していた。

すると、何本が走った後の歩夢くんと來夢くんが、私の元へやってきた。小休憩だろうか。私は背負っていたリュックに入れていたミネラルウォーターを、2人に渡す。

「はい」

「ありがと」

「さんきゅー、ちゃん!」

二人の口からは白い吐息が漏れていた。身も凍るような寒さだが、極限まで集中して飛んでいたのだから、彼らの身体の芯は熱くなっているのだろう。

「どう? 平昌のハーフパイプは」

「寒いから雪が硬いか思ってたけど、そうでもないね。雪質的には問題ないかな」

そう言うと、歩夢くんはゴーグルを額にあげ、ミネラルウォーターを1口飲んだ。

いつも思うんだけど、ゴーグルを取った瞬間に、歩夢くんの切れ長で美しい瞳がオープンになるので、ちょっとドキッとする。

ーー相変わらずかっこいいなあ、この人。

「そうだなー。でもちょっと長くないか?」

歩夢くんの言葉に頷きながら、來夢くんがパイプを見渡して言った。

「それは思った。壁もちょっと小さいね」

「あー、わかるわー」

2人はうんうん、と頷く。当然私にはよくわからない。でもマネージャーとして知っておいた方がいいのかなあ。私は平昌のパイプの全貌を見渡して、記憶の中のXゲームの会場と比べながら、2人の言葉を理解しようと務めた。

「まあ、慣れれば問題なさそうだよ」

歩夢くんはミネラルウォーターをまた1口。身体が重くなるから、少ししか飲まないだろう、と思っていたら、予想が的中して私にはペットボトルを渡してきた。私はそれを受け取る。

慣れれば、問題ないか。慣れたらきっと練習でも、あの技に挑むのだろう。彼の代名詞、ダブルコーク1440に。

危険が伴う技だから心配だけど、美麗で完璧な歩夢くんの回転がまた見られると思うと、私の方が武者震いしそうになる。

ー!」

「ん?」

すると、聞き覚えのある声が背後から聞こえてきたので私は振り返った。見ると、モスグリーンのウェアを着た長身であどけない顔をした男性が、こちらに走り寄ってきていた。

「Scotty!」

私は見知った顔に会えて嬉しくなり、手を振った。するとスコッティは片手にボードを抱えながらも、もう片手を広げて走ってくる。

ーーあー、あれはハグかな? まあオーストラリア人だし、普通か……。と、私がそれを受け入れる準備をしようとすると。

「You look pretty good, Scotty(元気そうだね、スコッティ)」

私とスコッティの前に、歩夢くんが素早い動作で割り込んできた。私にハグしようとしていたらしいスコッティは、虚をつかれた様子でたたらを踏む。

「shit.(ちっ)」

よくわからないが、小さく彼はそう言った。しかしすぐに人なっつこい笑みを浮かべる。

「Ayumu and Raibu seems to be in good shape, I was watching you practice.(歩夢も來夢も調子よさそうだね、見てたけど)」

「Thanks for that.(それは、どうも)」

「Are you practicing from now?(スコッティはこれから練習なんか?)」

「Yup. This time I will not lose, Ayumu.(うん。今度こそ負けないからね、歩夢)」

「……I hope.(……望むところ)」

歩夢くんは不敵に笑った。そして3人はグータッチをする。お互いベストを尽くして戦う事への誓い合い。3人とも、とてもかっこよく見えた。

するとスコッティはくるっと私の方を向き、爽やかに、しかしどこか色っぽく笑う。

、I'm glad to see you again.(、また会えて嬉しいよ)」

「Oh, yeah. You look nice and healthy.(あ、うん。スコッティも元気そうでなによりだよ)」

「Are you still an interpreter for Ayumu?(はまた歩夢の通訳?)」

「Yup. I am also doing his manager.(うん。あとマネージャー業も)」

「Wow. Are you free during the Olympic period?(へー。大会期間中は暇ある?)」

そんなスコッティの問に私は答えようとしたが、私が答える前に歩夢くんが間髪をいれずに、つっけんどんな口調でこう言った。

「There is no such thing. She is busy.(無いよ。は忙しいから)」

するとスコッティは歩夢くんを流し目で一瞬見ると、笑みを絶やさず私に視線を戻した。

「Hmm. Then, it can not be helped. Then, how about after the Olympics? , I will see you in Australia together ……(ふうん。それなら仕方ないか。じゃあオリンピック終わったらでいいや。、今度一緒にオーストラリアで……)」

と、スコッティが何やら言いかけた時だった。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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