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2/7 大田区 羽田空港 国際線ターミナル No.1

 

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歩夢side

久しぶりに訪れた羽田空港の国際線ターミナルは、平日にも関わらず混雑していてざわついていた。

これから日本を出国し、旅行に行くらしい家族連れ。日本に出張のために訪れたような出で立ちの、背の高い欧米人。ーー皆が皆、忙しそうに足早に移動している。

みんな自分のことに精一杯なようで、オリンピックの公式スーツを着て、出発ロビーの椅子に座っている俺にいまだに気づく人がいないのは正直安堵しかない。

平昌オリンピックのスノーボードハーフパイプ競技に出場するために、今日日本を出国する予定の俺。すでにチェックイン手続きはすませ、大きな荷物は預けている。

この場所で待ち合わせしているのだけれど、少し早く着きすぎてしまったようだ。來夢や卓、優斗はもうすぐ着くとの連絡があったけど。

ーーしかし。

、まだかな)

俺のマネージャー兼通訳に先日なったばかりの。彼女からの連絡は、まだない。

まあ待ち合わせ時間まではまだあるので別に変な事じゃないけど。

ーー会いたい。

Xゲーム後日本に帰って別れてから、今日で約1週間。その間マネージャー業のことでLINEや電話でやり取りをしたけれど、顔は見ていない。

たった1週間なのに、募る思い。あの魅力的な瞳に見つめられたくて。ちょっかいを出して照れさせたくて。

本当にらしくない。スノーボード以外のことで、こんなに執着したことあったかな。

そんな風に俺がぼんやりと思っていると。

ポケットに突っ込んでいたスマホが振動した。からだろうか。俺は慌てて画面を見た。ーーすると。

:ごめん、空港着いたんだけどちょっとトラブル〜💧 でも間に合うから手続き先しちゃっててー!】

からのLINE。ーーは? トラブル?

一体どうしたんだろう。忘れ物でもしたのか? 誰かと何かあったとか?

まさかスコッティみたいなやつに絡まれてるんじゃないだろうな。は写真のこと以外はぼーっとしてるし……充分有り得る。

思いついた途端、激しい不安に駆られる。元々じっとしていない子だ。正式にマネージャーになった今でも、何かの拍子に、どこかに行ってしまいそうな気がしてしまう。

俺はその場で大人しく待っていることができなくなり、とりあえず近くでの姿を探してみることにした。

ーーすると。

「அது இங்கே உள்ளத(こっちですよ)」

俺達が利用する便のチェックインカウンターから、何列か離れた別のカウンターまで移動した時に、聞きなれない言語を喋るあの声が聞こえてきた。

ーー少しのんびりしているけど、はきはきしていて、よく通る声。俺が好きでたまらない、あの声。

の声だ。

は俺に背を向けている状態。アジア系の外国人とにこやかに話していた。外国人は家族連れで、小さな女の子がを笑顔で見あげていた。

「 அது நன்றாக இருந்தது! நன்றி!(よかったです! ありがとう!)」

「பிரச்சனை இல்லை, நீங்கள் வரவேற்கப்படுகிறீர்கள்(いえいえ、どういたしまして)」

「ஓனி, மீண்டும் பார்! விட்டுவிடு!(お姉ちゃん、またねー!行ってきまーす!)」

「மீண்டும் பார்!(またねー!)」

手を振ってカウンターに向かう家族連れに、手を振り返す

その動作が終わったのを見計らって、俺はにそっと近づき、彼女の首筋をそっと触った。

「ひぇっ!?」

はびくっと体を震わせ、振り返る。いちいちかわいい反応をするなあと思いつつ、俺はおかしそうに笑う。

「あ、歩夢くん!」

俺の姿を認めると、は安堵したかのような微笑を浮かべた。ーーああ、だ。

本当にいるんだな。俺のマネージャーとして、ここに。

改めて実感し、安心なら嬉しさやらがこみ上げてくるけど、そ知らぬ顔をする。

「何してたの? トラブルってちょっと心配したわ」

「あ、ごめん。ちょっと困ってる人がいて。タミル語通じる人がたまたま空港の職員にいなかったから、案内してた」

「タミル……語?」

聞いたことはあるけど、どの辺の国で使われている言語なのだろう。相変わらずずば抜けた語学力である。

何にせよ大したことがなくてよかった。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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