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1/28 コロラド州 アスペン Xゲーム会場 No.3

 

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歩夢side

ーー俺がボードの調整を終えて控え室に戻ってみると。

(ーーん?)

カメラをいじるの傍らに、長身の外国人男性が立っていて、何やら話しているようだった。ーースコッティだ。あいつ、また性懲りも無く。

なんだかイライラしたので俺は二人の間に割って入ろうと近づいたか、2人の会話の内容が聞こえてきて、思わず立ち止まってしまう。

「Hey, then I would like to date with you one day if I win the competition.(ねえ、じゃあ僕が優勝したら1日デートしようよ)」

ーー何言ってんだあいつ。やっぱり邪魔してやるか。

でも、スコッティの言葉に対するの返答が気になって、俺はやっぱりその場に踏みとどまる。

はカメラをいじっていて、写真の整理に意識の大半を向けているようだった。堂々と口説かれているのに、特に照れている様子はない。

やっぱり写真のことで頭いっぱいになると思考停止するんだろうか……? 恐るべきフォトグラファー魂。

しかし俺は次の彼女の言葉を聞いて硬直する。

「OK.(いいよー)」

「えっ!? ちょ、ちょっと!?」

スコッティの方をちらりと見て、あっさり承諾するに、隣にいる友基が珍しく焦っていた。

「Is it true? Yay!Please observe the promise.(本当? やったね! 約束だからね)」

「Oh, yes.(あー、うん)」

「Absolutely I will win the championship.(絶対優勝するよ)」

するとスコッティは、鼻歌でも歌いそうな軽快な足取りで去っていった。実際歌っていたかもしれない。

ーーなんなんあれ。ショックだわ。

やっぱり海外を飛び回っているは、ああいうような余裕のある外国人が好みということなのだろうか。

明日になればと別れる覚悟は出来ていた。でもその前に俺の知ってるやつとどうこうなる姿を見るのは流石に耐えられない。

打ちひしがられ、座り込みたくなる俺。ーーしかし。

「ちょっと!ってば!」

「………。ん? どうしたの友基くん」

友基のただならぬ様子に、はやっとカメラを膝の上に置いて写真の整理をやめた。

「スコッティと! 何約束してんのー!?」

「え……? ああ、なんかデートとかなんとか言ってたっけ。オーストラリア人は軟派だよねー」

「いや違うって! たぶんスコッティ本気だって!」

のんびりと言うに、友基は血相変えて言う。するとは驚いた表情になる。

「ええ! そうなの!?」

「そうだよ! 早くそんなんじゃないって言ってきなよ!」

「そうだね……本気なら適当に返事しちゃって悪かったな。あとで謝らなきゃ」

「このままじゃスコッティが勝ったらデートじゃん!」

「ーーあ。でもそれは大丈夫だよ」

は途端に平然とした表情になった。

は?何が大丈夫なわけ。俺は大丈夫じゃないし。俺の方から否定してきてやろうか。

文句を言うために、スコッティの姿を探す俺。しかし、次のの言葉を聞いて、俺はそれをやめた。

「本気じゃないだろーな……ってのはもちろん思ったけど、それだけで「いいよ」って言ったわけじゃないんだよ」

「え……どういうこと?」

「スコッティは勝たないよ。だって歩夢くんが勝つから」

至って普通の口調で、至極当然、といった態度では言った。

「だから私がスコッティとデートすることはないわけです」

友基に向かって満面の笑みを浮かべる。友基は虚をつかれたような表情になった。

「なんで……そう思うの?」

「えー? なんでって言われると……よく分かんないんだけど。歩夢くんの滑りは見てるとゾクゾクするの。他の人のはすごいなーとは思うけど、それだけなんだよね。ーーそれにさ」

は一呼吸置いてから、こう続けた。

「歩夢くん、『 もっとすごいの見せてやるわ』って言ってたもん。負けるわけないよ」

するとは、「写真整理続きしよーっと」と軽く言って、カメラを再び見だした。

そこで俺は2人の前に戻った。

「あ、歩夢くんおかえりー! ボード調整出来た?」

カメラから顔を上げ、俺に笑顔を向ける。そういえばスコッティが来た時は、ほとんどカメラ見たままだったな。

「ただいま」

ーー俺の勝ちだよ、スコッティ。俺は笑ってしまいそうになるのを、必死でこらえた。

「歩夢……さっきの聞いてた?」

友基が面白そうに俺を見てきた。が、なんか照れくさかったので俺は素知らぬふりを決め込む。

「なんの話?」

「聞いてたでしょ」

「………」

めんどくさくなって、俺は明後日の方を向く。



ーー歩夢くんが勝つから

ーー歩夢くんの滑りを見てるとゾクゾクするの

ーー負けるわけないよ

3回目のRUNは、渾身の力で攻めていこうと思った。例え失敗しても。ーーいや、失敗なんかしない。

1440のーー4回転の連続技。今まで公式では誰も成功させたことのない、決死の覚悟で挑まなければならない、大技。

今なら……このあとすぐの3本目のRUNなら、俺は夜空を味方につけて、それが飛べるのではないかと思えてならなかった。

だってこっちには、勝利の女神がついている。そんな俺にできないわけ、ない。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

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