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1/28 コロラド州 アスペン Xゲーム会場 No.2

 

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2本目のRUNは、1本目とほぼ構成は同じだったけれど、最後の最後にバックサイドダブルコーク1260を入れてきた。

先ほど、息ができなくて流した、といった箇所で入れてきた、難易度の高いバックサイドダブルコーク。

練習中も、この技を特に重点的に繰り返していたと思う。そういえば数日前に、やっと自分のものにできそう、と言っていたのを覚えている。

1本目よりも難しい構成のルーティーンをあっさりと決める歩夢くん。

歩夢くんが見上げたスコアボードには、96.66と表示された。当然ながら、現時点では暫定トップだ。

周囲はもう、お祭りムードだ。すでに優勝が決まったかのように、歩夢くんへの歓声が聞こえてくる。

私たちの眼前でボードを止めた歩夢くん。やはり今回も、特に嬉しさや喜びなどは表情からは感じ取れなかった。

「バックサイドのダブルコーク、決められたじゃん。おめでと」

「あー、うん」

友基くんの言葉にちょっと上の空気味に返事をする。ちらちらパイプの方を歩夢くんは気にしていた。

「……まだ、狙ってるのあるの?」

気になって、私は尋ねた。正直、彼のRUNに魅せられた私は、これ以上のものを見せつけられたら身が持ちそうにない。

「うーん……まあ。……まだ、やりたいのは、ある」

歩夢くんは何かを考えているようだった。3本目のRUNで挑戦する内容を、考え込んでいるのだろうか。

「後ろにスコッティも控えてるし、三本目も守りには入りたくない」

スコッティの滑走順は歩夢くんのすぐ後で、ちょうど今2本目が終わったところ。スコアボードを見たら96点と表示されていた。歩夢くんとの差は1点未満という僅差だ。

「ーーそれに」

歩夢くんは少し間を置いてから、こう続けた。

「3本目に……俺が考えている技、成功できないと。命懸けでやらないと。たぶんオリンピックじゃ勝てない」

そう言うと、歩夢くんは私に背を向けてボードを片足で押しながら、去っていってしまった。

ーー4年にたった1度しかないオリンピック。その舞台に全身全霊をかけているのは、歩夢くんだけではないだろう。

しかし、こんなに圧倒的な滑りをしても、勝てないのがオリンピックなのだろうか?

命をかけなければならないくらいに。

世界は広いな、と私は歩夢くんの背中を見て思った。





「あー……思うようにできんかった……くっそー」

「まあまだ3本目があるじゃん」

悔しがる來夢くんを、元気づけるように友基くんは行った。

1本目と2本目で思うように点数が伸びなかった來夢くん。素人目で見るともっと点が出てもいいんじゃない?と思ったが、來夢くんが文句を言わずに悔しがっているところを見ると、妥当な点数なのだろうか。

3本目が始まるまで、まだ時間があったので、私たちは選手と関係者のみが入れる部屋で、休憩していた。

歩夢くんはと言うと、ボードの調整をスタッフに頼む、ということで現在席を外している。

「そうだな! あ!俺もボードをスタッフに見てもらってくるわ!」

すると來夢くんもボードを抱えて、走り去ってしまった。

來夢くんも実力を出し切れるといいなあ。私はその背中を見て心から思った。

「あ、ちょっと写真整理するね」

「うん」

友基くんにそう言うと、私はカメラの電源入れ、2回目のRUNまでに撮影した、歩夢くんや來夢くんの写真を見返した。

ーーあー、歩夢くんもっとかっこよかったのに。全然うまく撮れてないや。

どうしても彼のRUNは、写真を撮るよりも、この目に焼き付けることが本能的に優先されてしまい、撮影がおざなりになってしまう。

はぁ、こんなんフォトグラファー失格だわ。

ーー私がちょっと落ち込みながらそんなことを思っていると。

「Hey.」

いつの間にか、眼前にはスコッティが立っていた。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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