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1/27 コロラド州 アスペン コテージ No.1

 

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「うー……」

目が覚めると目蓋の上が痛くて、私は手のひらを目の上に当てながら、低い声で呻いた。

えっと……なんでこんなに痛いんだ……?

寝ぼけた頭で私は理由を思い起こす。すると、朧けな頭ですぐに昨日の出来事を思い出した。

ーーあー。そうだ。昨日あんなこと……。

だんだん記憶が鮮明になってきて、私は昨日感じた恐怖に身震いしそうになる。あの状況で、よく無事で済んだもんだ。

目蓋が重くて痛いのは、昨日散々泣いたせいか。

歩夢くんにギリギリのところで助けられて、緊張の糸が切れてしまって、私の涙腺は崩壊してしまったんだ。

ーーそれにしても、本当に大事な大会の前に迷惑をかけてしまった。

いつもなら1人だから、例え自分がどんな目に遭っても誰かに迷惑をかけることはないけど、今回は違う。

もうちょっと自重するべきだったなあ、と私は深く反省する。

昨日寝る前のことはよく覚えていない。確か歩夢くんには謝ったような。彼は「別いいよ」という感じだった気がするけど。

「もう一度、謝ろ……」

私は独りごちて、目は覚めたけどまだベッドから出る気は起きなかったので、寝返りをうった。

ーーすると。

あれ、歩夢くんがいる。

私と同じベットに寝ている歩夢くんは、毛布から上半身がはみ出ていた。

タンクトップから伸びる腕は、私が思った以上に筋肉質で筋張っていて、少し意外だった。

もっと華奢かと思ってた。着痩せするタイプなんだなあ。

しっかし寝顔もかっこいいなあ。睫毛長ー。相変わらず全てのパーツが黄金比……

ーーって。

「な、なんでーーー!?」

私は思わず声を上げて飛び起きた。

な、な、ななんで!? 歩夢くんがここに寝てんの!? ええええ!?

私は必死に昨日寝る前の出来事を思い出す。ーーあれ。

私が言ったんじゃん、行かないでって。

だから居てくれたのか!? で、で、でも!あの時は必死で! 部屋に1人になるのが怖くて! 一緒のベッドで寝るとかなんとかとか深い事考えてなかったーー!

ーーって、歩夢くんタンクトップだけど。ーーまさか。

なんか、そういうことになってないよ……ね?? 部屋に戻ってきてからあんまり覚えてない…。

すると私の声に目が覚めたのか、歩夢くんが私のの子で突然むくりと起きた。私はびくっとする。

「んー、 おはよ」

すると歩夢くんは半開きの目を擦りながら、少し眠そうだが普段のテンションで言う。

「お、お、おはよっ」

私は焦りすぎてしまって噛み噛みになる。そうしているうちに彼の意識ははっきりしてきたようで瞳孔が開いてきた。

ちゃ、ちゃんとはっきりさせないと! よくないよね!?

「あ、あの!」

「んー?」

歩夢くんは私の横で首をかしげた。いや、だからなんでいちいちそんなかっこかわいいのこの人。

「わ、私!歩夢くんと……あ、あの……して、ない……よね?」

私のたどたどしい言葉に、歩夢くんは少しの間目を見開き私を見ていた。

ーーが、「ふっ」と口で小さく笑うと。

何故か、少し意地悪そうな笑みを浮かべた。そして私に顔を近づけ、見つめてこういった。

「したって何を?」

「えっ……えー!」

思ってもみないことを問われ、私はどぎまぎしながら言葉に詰まる。

すると歩夢くんはさらに私に迫るように顔を近づけ、不敵に笑いながらこう言った。

「言えないようなこと?」

「なっ……えっと、そ、それは……」

「言ってくんなきゃ俺わかんないんだけど」

「も、もう! 分かるでしょーー!!」

意地悪な彼の問に痺れを切らし、私は叫ぶ。ーーすると彼は。

「ーーうん。分かる。してないよ」

「わ、分かるんじゃん! 早く言ってよ!もう!」

何故かあっさり分かってくれた彼の言葉に、私は安堵する。ーーはー、なんだよかった。

やっぱり私のお願い聞いて一緒にいてくれただけなんだ。やっぱり歩夢くんは優し……

ーーと、胸をなでおろしているのも束の間だった。

「ーーなんなら」

「ーーえ?」

歩夢くんは突然私の両肩に手を添え、そのまま身を起こしている私の体を押し倒した。

そして私を見下ろし、片手を私の頬に添え、優しく……しかしどこか意地悪く、こう言った。

「今からする?」

私を見下ろす彼の顔は、勝ち誇ったような笑みが浮かべられていた。獲物をとらえたかのような、野性的だけど色気のある微笑み。ーー抗える気がしない大胆な視線に私は身動きが取れない。

「な、な、なん……え、あ…」

私は顔が熱くなるのを感じ、混乱して呂律が回らなくなる。彼はそんな私を面白そうに見おろしていた。

ーーそして。

歩夢くんの顔がどんどん近づいてくる。形の良い唇が眼前に迫ってきた。

ーーキスされる。そう思って、私は反射的に目をつぶった。

が、しかし。

予想していたような唇の感触はなく、代わりに感じたのは、額への軽くごつん、とした感触。

「……冗談だよ」

歩夢くんは私と額と額を軽くくっつけた後、おかしそうな笑みを浮かべて私から離れた。

「え!? え、あー…うん……」

私は熱くなった頬をさすりながらよくわからない返事をする。

すると歩夢くんはベッドから立ちあがり、私の方を向き直っていたずらっぽくこう言った。

「残念だった?」

「ーー! ち、違う!」

歩夢くんが離れて余裕が出来た私は恥ずかしくなって、がばっと身を起こし、必死に首をぶんぶん横に降る。

「ふーん」

「違うもん!」

「ほんとに面白いね、は」

「面白くなーい!」

「はいはい。じゃ、俺行くわ」

軽い感じでそう言うと、歩夢くんはあっさり私の部屋から出ていってしまった。

ーーもう! なんなのー!? 結局謝れなかったし!

私はいまだに少し熱い身体と軽い苛立ちを、布団の中に潜り込んで沈めようとする。

ーーだけど。

冗談だよ、って言った時の歩夢くんが、少しだけ寂しそうな気がしたのがちょっとだけ気になった。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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