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1/26 コロラド州 アスペン 林中 No,4

 

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歩夢side

あれは本当に なのか?

ーー彼女の眼前には、確実に力では歯が立たないと思われる外国人の男二人。その2人に、今にも乱暴されそうな状況。普通の女の子なら泣き叫んでいてもおかしくないだろう。

だって、俺が少しからかうだけで照れるし、すぐ笑うし、よく食べるし、ちょっとカメラおたくなだけで、普通の女の子……だと、俺は思っていた。

しかし、 は、両足をしっかり地につけて、少しも怯む様子もなく立っていた。目を見開き、彼らを真っ向から見据えて。

夕暮れになり、木の枝の隙間からさす西日が、 の顔を照らし出す。

ーー凛としていて。気高くて。とてつもなく清らかで勇ましくて。

俺はこんな状況下にありながら、こう思ったんだ。

なんてきれいなんだろう、って。



友基のGPSを頼りに がいるらしい場所の近くまで来た俺たちだったが、さすがに正確な場所までは分からなかった。

そして俺たちは手分けして を探すことにしたのだけれど、数分探していたら、俺は と2人の男を見つけた。

きっと怖い思いをしているに違いないーーそう思っていたので、怯えている を俺は思い浮かべていたのだが。

の様子があまりにも想像と違っていて。ーー想像を絶する美しさで。

俺はその場に立ち尽くし、彼女に見惚れてしまっていた。

会話の内容からすると、 と彼らはどうやら取引をしているらしかった。ーー圧倒的に弱者なはずの が、どうしてこういう経緯まで持っていけたかは分からなかったが。

「I want to make you cry more and more.(ーーますますあんたを泣かせてみたくなった)」

黒髪の男の言葉に……不謹慎だが俺は共感してしまう。

あんなにきれいな存在を、自分の手で歪ませたらどうなってしまうのだろう。ーー想像するだけで、全身を支配されそうになる背徳感と悦楽。

しかし、男が に近づきそうになり、俺は慌てて我にかえる。

何見蕩れてんだ。早く助けろよ。

ーーそれに、お前らなんかに を傷つけさせてたまるかっての。

「Freeze.(動くな)」

俺は落ち着いた声で、しかしはっきりと言った。ーーたぶん、四の五の言わずに短い言葉を発した方が、こういうときは効果があるだろう。

は俺の存在を認めた瞬間、今にも泣き出しそうな表情になった。それを見て、俺の中で変な感情が湧き上がる。

ーー を泣かせてもいいのは、俺だけなんだ。

「Get lost.(消えろ)」

彼らと の間に入り、俺は低い声でそう言い放った。鋭い視線を彼らに向けて。

不思議と彼らに対して恐怖は感じなかった。ーーたぶん、 を彼らに傷つけられてしまうかもしれない、という恐怖が勝っていて、その他のことを感じる余裕がなかったのだろう。

「What? Who is this brat?(なんだ? このガキ)」

すると金髪が俺を見て、不快そうな顔をした。確かに俺は背が低いし顔つきも幼さが残るので、彼らからしてみれば子供に見えるかもしれない。

ーーしかし。

「Hey. That man probably ... ....(……おい。そいつは)」

黒髪の男がはっとしたような顔をすると、金髪の肩に手を置いた。

「こいつがなんだよ?」

「... ... It is a celebrity, that guy. Worldwide.(……有名人だよ、そいつ。世界的に、な」

「Ah! What?(はぁ!?)」

「The woman seems to have better give up. ...... When hands are given to a woman whose name is, the surroundings are silent.(その女は諦めた方が良さそうだ。……名のあるやつの女に手を出すと、周りがやばい)」

「……Shit.(……ちっ)」

金髪の男は苦虫を噛み潰したような顔をすると、踵を返して俺たちに背を向けた。

「……It can not be helped. let's go.(……しょうがねえ。行くぞ)」

そう言う金髪の男のあとを、黒髪の男が追った。そしてしばらくすると、彼らは俺たちの前から姿を消した。

彼らが完全に見えなくなったのを確認してから、俺は振り返り と目を合わせる。

は目を大きく見開いて、俺を黙って見ていた。瞳は少し潤んでいた。

「ーー大丈夫?」

俺がそう言ってからしばらくした後、 の大きな双眸から、涙がとめどなく溢れ出てきた。

「……あ、あれ。とまら……ない……」

はしゃくり上げながら懸命に涙を拭う。しかし後から後から、それは噴水のように湧き出てきて。

そして はその場に座り込んでしまった。

「……ごめ……立てない……」

腰が抜けてしまったらしい は、か細い声で言う。

俺は反射的に を抱きしめた。そうしなければいけないような気がした。 はされるがままだった。そして の耳元で、こう言う。

「もう、大丈夫だよ」

すると は俺にしがみついてきた。

「……怖かった……。怖かった、よ……」

先程の強気な態度とは一変。子うさぎのような脆弱な声で、 は言った。

ーーよく、こんな状態で。自分の弱さを内面に押し込めて。小さな体に上っ面の強さをコーティングして、あの男達と戦っていたものだ。

内側の弱さを露呈した を、俺はしばらくの間抱きしめていた。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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