記事一覧

1/24,コロラド州 アスペン コテージ no.5

 

Your name






「Hey.(へい)」

に気を取られていたが、スコッティも一緒にいたことにやっと気づく俺。

俺たちがここに帰ってきてからまだ1時間弱。ってことは、スコッティはあんな意味深なメール送っておきながら、本当に充電器だけ渡して をここまで送ってきたということだろうか?

「スコッティぃぃぃぃ! 疑ってごめんなー! ちゃんがかわいいからもう心配で心配でー!」

スコッティに近づきながら、日本語で叫ぶ來夢。おい、何言ってるかあいつにはわかんないんじゃないかそれじゃ。

ーーしかし。

スコッティは來夢の様子を見て、取り繕ったように苦笑を浮かべた。ーー言葉はわからないはずだが、ニュアンスはわかったようだ。

(……やっぱり、狙われてたな )

恐らくこいつは本気で になんかしようとした。でも首尾よくいかなかったのだろう。

「……なんなの、來夢くんのこのテンション」

「いやまあいろいろあってね」

呆れたように友基に尋ねる だが、友基は肩をすくめてそれだけ言った。

ちゃーん! 本当によかったよおお!」

「わ、こっち来た」

異様な温度の來夢が走り寄ってきて、思わずたじろいでしまう 。ーーおいそんなことばっかりやってるとそのうちキモがられるぞ、來夢。

そして來夢が離れたスコッティに俺は近づく。彼は目を細めて、「ちょ、ちょっと來夢くん! キモい!」と來夢から離れようとする を見ていた。ーーあ、キモがられてるやっぱり。

「failed?(……失敗した?)」

そして俺は、スコッティにだけ聞こえるような小さな声でそう尋ねた。

彼は一瞬驚いたようだったが、くくっと小さく笑って、不敵な笑みをたたえた。

「There is no gap to her at all. I was defamed by her well.(全然隙がないよ。体良く断られた)」

「……ふーん」

「Well I will not give up on her.(まあ僕は諦めないけど)」

「Yep.(あ、そう)」

ーーどうやらこいつも本気らしいぞ、來夢。どうしてここまで はスノーボーダー達を魅了するのだろうか。

「Well, I'm leaving. See you next time, Ayumu.(じゃ、僕は帰るよ。またね、歩夢)」

「Ok, see you.(うん、また)」

に挨拶もせず、あっさりコテージから出ていくスコッティ。未練がましくないところは、いかにも彼らしい。

それにしても、スコッティは一応 を口説いたということなのか……? それにしちゃ、今の の反応が普通だな。

男に誘われでもしたら、例え拒否したとしても、何事もなかったかのようにできるタイプには見えないけど。

「歩夢くーん! 來夢くんが気持ち悪いー! 助けてー!」

まだ來夢に追いかけられていた は、逃げるように俺の後ろに隠れた。

「はいはい、もう感動の再会はおしまい。そろそろ寝るよ」

「い、今なら抱きつけると思ったのにー!」

友基が來夢の首根っこを掴み引きずっていく。やっと來夢の魔の手(?)から逃れられた は、俺の隣で安堵したかのように息をついた。

「……はあ、もうなんなの。あれ? スコッティ帰っちゃった?」

「……あのさ、

「ん?」

「充電器取りに行った時、スコッティに何か言われなかった?」

はきょとんとした顔をして俺を見た。何を言っているかわからない、と言った感じだったが、なにか思い出したのか、「ああ、そういえば」と言うと、

「なんかねー、1晩付き合ってくれない?って言うからさ」

「ーーえ」

なんてストレートな。

「すごく真剣に言うから断りづらかったんだけどさー、私そんなにお酒飲めないから。今度みんなで行こうよーっ、あっ、でも歩夢くんはまだ未成年だからランチでどう?って言った」

「………」

いや、普通男が女にそう言ったら、飲み明かすほうじゃない方を想像するだろ。

もそこまで馬鹿じゃないとは思うが……。

「あ!そうそう!見てみて!」

が俺にカメラの画面を見せてきた。充電したんだな。

「ほら、この前の練習のときに撮った歩夢くんのダブルコーク1440! これいいでしょ!」

満面の笑みで言う。心底嬉しそうだった。画面には、躍動感のある俺の一瞬の姿。相変わらず、最高にかっこよく撮ってくれている。

ーーああ、そうか。

「……ふ。あははっ」

いつぶりだろうか。こんなに声を出して笑ったのは。

「ーーへ。歩夢くんどうしちゃったの……?」」

急に笑い出した俺に呆然とする 。しかし後から後からこみ上げてくる笑いに、俺は彼女の問いには答えられない。

だって、面白すぎる。なんて面白い子なんだろう。

カメラ馬鹿の は、カメラが復活するのを目前にして、他のことはなーんも考えられなかったのだろう、きっと。

だからスコッティの言葉も、適当に理解して適当に流したのだ。哀れ、スコッティ。お前の気持ちはまったく伝わっていないぞ。

「……本当に面白いね、 は」

「……は? え、ちょ、ちょっと! な、な、何!?」

思わず の頭の上に手を置きくしゃくしゃとサラサラの髪を触る俺。 は驚いた後、顔赤らめた。ーーかわいい。

この顔を、スコッティに見られなくてよかった。俺の「かわいかったから」という言葉と、ソースを取ろうとして口元を触った時と、今現在俺の隣で見せているこの顔を。

俺だけが、 をこんな顔にできる。この権利は誰にも渡さない。

ーー俺が彼女を好きかどうかは。結論づけるのは非常に恐ろしいことだから、まだ考えないことにして。


励みになります→ web拍手 by FC2

前のお話   次のお話

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

名前変換

 

Your name