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3/22 新潟県村上市 瀬波温泉旅館 No.4

 

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歩夢くんに支えてもらいながら、ドロップインに成功する私。

スケートボードに乗るのは14年振りで、少し……いや、とてつもなく不安だったけれど、私の魂がバランスの取り方を少しだけ記憶してくれていたらしい。

昔……あーくんと過ごした真夏の日々を思い出した私は、あの頃のようにスケボーを滑れる気がした。

あの頃あーくんに1ヶ月以上教えて貰った私は、それなりに滑れるようになっていたはずだ。ーーたぶん。

「やった! できたー! ドロップイン!」

スケートボードから降り、歩夢くんの横で飛び上がって喜ぶ私。

「なんか、ちょっとやればすぐそれなりに滑れそうだね、

「え、ほんと?」

「ーーまあ。昔俺が教えたからかな?」

少し得意げに歩夢くんが言うので、私はおかしくなって微笑んだ。

「そういえば、昔歩夢くんにドロップイン手伝ってもらった時、豪快にコケたよね、私たち」

「ーー俺小さかったから。あの時はごめんね」

苦笑を浮かべて歩夢くんが言う。私は首を振った。

ーー大人になったあーくん。今では軽々私を支えてくれる。

私たちは14年前に過ごした日々のことを語り合ったけれど、お別れの時に交わした約束については、歩夢くんは語らなかった。

きっと彼はもう忘れてしまっているのだろう。

ーー小学一年生の私は、確かに君に恋をした。

しかし生まれて初めて抱いたその恋心は、儚くもそこで終わってしまった。あーくんと別れてから、しばらくの間は会いたくて仕方なかったけれど、そのうち現実を理解し、決してもう会うことは無いと私は悟った。

そしてそのうち記憶は薄れていく。今では時々、昔すごく好きだった男の子がいたなあ、とぼんやりと思い出すくらいだった。

ーーそして現在の私は。

「じゃあいつかスケボー教えてもらおうかなあ。ーーあーくんに」

冗談交じりに言う。今の歩夢くんは、人に教えている暇なんてないだろう。ーーだけど。

あの日の約束が実現するとしたら。ーーあーくんが20歳になったら、ずっと一緒にいようと誓い合った私たちの約束が、いつか現実のものになったとしたら。

競技生活を一段落させたあーくんに、指導してもらいたい。

ーーもう誤魔化すのは無理だ。私はこの人が好きなのだ。世界的なスノーボーダーで私とは釣り合わないと、見て見ぬふりをしてきたけれど。

小学一年生の私も、20歳の私も、歩夢くんを好きになることからは、逃れられなかった。

「ーーいいよ、暇な時ね」

19歳の歩夢くんが、不敵に笑って言う。

ーー大人になったら、ずっと一緒にいようと言ったこと。結婚しようと、約束したことを。

なーんてこと、あなたはきっと覚えてないんだろうなあ。

少し残念にそう思った私は、いつもの様に歩夢くんに微笑んだ。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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