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3/22 新潟県村上市 瀬波温泉旅館 No.3

 

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歩夢side

「もう忘れちゃったなあ、乗り方」

が苦笑を浮かべながら、俺から借りたスケートボードの上に片足を乗せると、ふらつきながらプッシュした。

の乗り方はやや心もとなかったけれど、少しは体が覚えているのだろうか。なんとか転倒せずに、数メートル無事に進んだ。

ーー幼少の時の、淡くおぼろ気な思い出を、俺たちはお互いに記憶の糸を手繰り寄せて、2人で語り合った、その後。

がスケボーに乗りたい、というので俺が使っていたものを貸したのだった。

俺はだったなんて、今の今まで思いもしなかった。こんな奇跡のような偶然なんて、起こり得るわけがない。ーーだけど。

5歳の俺も19歳の俺も、確かに君に恋をした。俺が自分から女の子に入れ込んたのは、5歳と19歳の、たった2回。

俺は、君にしか恋が出来ないらしい。どうやら、そういう風に俺はできているようだ。

「ねえ、私ドロップインできるかな?」

がランプの淵に立って、おかしそうに言う。

ーー5歳の頃の俺は小さくて、力も弱くて。ドロップインしようとする君を支えることなんて出来なかった。

だけど今は。今の、俺なら。

「あー、でもやっぱり怖いな」

「ーー補助しようか?」

「え?」

「手握って、支えるから」

俺はランプのカーブに移動し、に向かって手を伸ばす。するとは、照れくさそうに笑った。

「うん、お願い」

ーー俺はと過ごした日々をほとんど隅から隅まで思い出していたけれど、14年前の別れ際のやり取りのことは今のには言わなかった。……いや、言えなかった。

大人になったらずっと一緒にいようと言ったこと。ーー結婚しようと約束したこと。

だって君はたぶん、そんなこと覚えていない。君が覚えていないのに、ずっと一緒だの結婚だのを約束したことを言うのは、野暮な気がして。

俺はあと少しで20歳になる。母さんは20歳になったら、をさらってもいいと言っていた。

ーーさらうよ。俺は必ず、君を。

俺は夢は必ず叶える。スノーボードもスケートボードも。ーーのことも。

「じゃ……行くよー」

「ーーOK」

俺と両手を繋ぎ合い、は怖々とドロップインをした。

俺はもちろん、倒れこまなかった。軽々とを支え、2人がかりのドロップインは難なく成功する。

これくらい楽勝にこなさなければ。ーーだって。

君の全てを、俺はもらいに行くのだから。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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