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2004/8/15 新潟県村上市 スケートパーク

 

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明くる日、早朝東京を出て村上に昼前に到着して。

大会に出場した英樹は、「疲れたから家で寝たい」と主張し、父さんはまず自宅へと車を走らせたのだったが。

英樹を自宅前で下ろすなり、俺は「スケートパークへ行って」とすかさず父さんにお願いした。俺がスケボーの練習をすると喜ぶ父さんは、俺の真意には気づかず、嬉しそうにスケートパークへと向かってくれた。

ーー、いるのか。

もしもう村上からいなくなっていたらどうしよう。先日、が夏休みが終わったら俺ともう会えなくなってしまう、と悲しんでいたことを思い出した。

あの時はよく分かっておらず、を慰める余裕すらあった俺。ーーけど。

彼女がいなくなったかもしれないこの状況に、現在の俺は自分でも理解できないほど、焦燥感に駆られていた。

スケートパークに車が到着するなり、俺は車のドアを小さな手で開け、駆け出す。勢いよく、飛び出すように。ときどき足がもつれて転びそうになりながらも。

そしてスケートパークの中へと、俺は滑り込むように入った。

ーーすると。

「あれ! あーくん、お帰りー」

入ってすぐに、の姿があった。拍子抜けをするほど、自然に。当たり前のように、彼女にとっては大きすぎるほどのごついカメラを両手で持ちながら。

「……なんだ」

ーーいるじゃん、

全速力でかけてきた俺は、息を切らしていた。の存在に心底安堵し、肩で息をしながらその場に座り込む。

ーー嬉しくて。もういないと思っていたが、そこにいてくれたことが、心から嬉しくて。

「あーくんどうしたの?」

突然の俺の意味不明の行動に、頭上からの訝しがる声が聞こえた。

俺は顔を上げる。の活き活きとした、深い光を宿した大きな双眸が目に入る。

ーーああ、がそこにいる。そう思った。

「ーーなんでもない」

呼吸も整い始め、俺は立ち上がって平静を装って言う。ーーがいなくなったかもしれないことが心配で不安で、走ってここまで来ただなんて、恥ずかしくて言えるわけない。

「ふーん?」

「ーーきのういなかったみたいだけど。どうしたの?」

そういえば、とでも言うような、何気ない口調で俺は尋ねた。

「きのうねー、かぜひいてねてたの」

「かぜ……」

「でももうなおったよ!」

ーーなんだ、そういうことか。心配させやがって。

と、心の中で俺は少し毒づく。俺がこんなに必死なのに、あっけらかんとしているがほんのちょっと憎かった。

「あ! これみてー! しゃしんとったの!」

そんな俺の複雑な感情なんて、当然知る由もないは、俺に近寄りカメラの小さな画面を見せてきた。

「どう? じょうずでしょ!」

そして彼女が取ったらしい写真を、画面に順に映し出し、得意げに言った。

写真にはスケートパーク内の風景や、パーク内を滑る人物などが撮影されていた。

それが上手な写真なのかどうかは俺にはよくわからなかった。が、が一生懸命撮った写真なのだから、きっと上手に違いないと思った。

「うん、すごいね」

「ほんと!? ……えへへ」

俺の言葉に、が照れながら心底嬉しそうに微笑む。なんだか俺まで嬉しくなってにやけそうになり、俺は誤魔化すためにから離れ、近くにあったパークに置きっぱなしのスケートボードを拾う。

「ーーあのさ、

「なーに?」

「おれのことも、しゃしんとってよ」

そう言ってスケボーに足を乗せ、プッシュをして進む。背後から「うん!」と勢いのいいの返事が聞こえてきて、俺は今度こそにやけてしまった。

そしてその日、は俺の写真を沢山撮ってくれた。そのカメラのデータを母さんが見てくれたらしく、数日後にが撮影した写真のうちの1枚が、パークの壁に貼られていた。

その写真に映されていたのは、その日飛びっきりうまく飛べた瞬間の俺だった。







私も8/31まで夏休み欲しいなー……。

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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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