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2004/8/10 新潟県村上市 秘密基地 No.1

 

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歩夢side

の元気がない。

その日も、朝からいつものようにスケートパークに来て、俺に教えられながらスケボーをする

一見いつものように明るく微笑みながら、スケボーの練習をしていように見えるだったが。

ふとした瞬間にどこか寂しそうな表情をして、虚空を見上げながらぼーっとしている。いつもより口数も少ない気もした。

と一緒にいる時間の長い俺以外の人間には、分からない変化かもしれない。

「どうしたの?」

昼食時、母さんが作ってくれた弁当を食べ終えた俺は、スケートパークの外で海を眺めていたに尋ねた。いつもなら、は旅館の食堂で家族とお昼を食べていたが、今日は両親とも出かけているらしく、持たされたおにぎりを齧っていた。

「え、なにが?」

はきょとんとした顔をした。俺は彼女の隣に座る。

「げんきない気がする、今日」

は驚いたようだった。周りに悟られないように振舞っていたつもりだったのだろうか。

しかし俺に指摘されて、それ以上隠すつもりは無いらしかった。

「……うん」

はおにぎりを食べ終えると、膝を抱える。

「きのうね、ママとパパになつやすみがおわったあとの話されたの」

「ーーえ?」

「わかってたんだけどね、なつやすみがおわったらここじゃないとこ行くって、はじめから。ーーだけど」

するとは瞳を少し潤ませ、相変わらず海を眺めながらこう続けた。

「なつやすみがおわったら……やっぱりあーくんとバイバイなんだなあ、って。……急に、悲しくなった」

「…………」

俺はなんて言ったらいいか分からず、黙った。

ーーその時の俺は、の言っていることを半分くらいしか理解していなかった。

別に村上からいなくなったって、会おうと思えば会えるじゃないか。この頃から俺は、スケボーやスノーボードの大会に出場する英樹について行って、東京やら北海道やら長野やら、全国のいろいろな場所をしょっちゅう回っていた。

その度に、現地でしか会えない友人とは何度も再会していたし、それなりに仲良くやっていた。

だからが村上からいなくなったとしても、そんな風に会えると思っていた。

「ーー大丈夫だよ」

「え?」

「また、あえるよ」

だから俺は簡単ににそう言えた。本当に、そう思っていたのだ。

「ーーそうだね」

すると、がぎこちないけれど笑ったので、俺は安堵した。

ーーこの時のは何を考えていたのだろうか。幼い俺の浅はかな励ましに、気を遣ってくれたのだろうか。何も知らない俺を、がっかりさせないように。

、ちょっと来て」

そして俺はさらにを元気づけようと、彼女の手を取り立ち上がる。は戸惑いながらも俺に従った。

を連れて、スケートパークから少し離れた海とは反対側の小さな山へと入る。

「どこへ行くの?」

「ーーひみつきち」

道とはほとんど呼べないような山道を歩きながら、の問いに俺は答える。

ーーそしてしばらく歩いた後。

「ーーわあ!」

が瞳を輝かせた。立ち並ぶ木々を抜け、俺達がたどり着いたのは、小高い丘。太陽の光によってきらめく群青の海が一望できるーー俺の秘密の場所。

母さんに怒られたり英樹と喧嘩したり、練習が上手くいかなかった時に、俺がよく一人で来て、心を癒しに来る、誰も知らない秘密基地。

「きれいなところ!」


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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