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プリクラ No.2

 

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「ーーさあ」

ラブラブモードがいやに気になって、適当に答えてしまう俺。

きっと恋人同士が撮影するためのモードなんだろうけど。ーー一選ぶとどんなことが起こるんだ? プリクラの仕組みがよく分かってない俺には検討もつかなかった。

「え、どうしよう。わかんない……あっ!」

“ラブラブモードに決定っ!”

プリクラの機械がやけに明るく喋る。え、なんだこれ。なんでラブラブモードに?

「なんで勝手に決まったんだ……?」

「時間切れだって。たまたまカーソルが合ってたラブラブモードになったみたい。って、時間切れるの早っ! 古いからかな?」

苦笑を浮かべながら言う。俺が高校生の時友達に連れられて撮影したプリクラには、時間切れなんてなかった気がするんだけど。やはりこの機械が古いからか。

って、ラブラモードになってしまったわけだが。一体何が起こるのか。

“お題にそってラブラブモードだよ☆ 出てきたお題に合ったポーズを取ってね!”

「お題に……」

「そって……?」

うまく意味が飲み込めていない俺たちだったが、プリクラ機はもちろんそんなことには構わず、勝手に喋り始める。

“まずは二人ともスマイルでー! 笑って笑ってー!”

ああ、なんだこういうことか。ってか、ラブラブモードなくせに普通じゃないか。ちょっとがっかり。

横目でを見ると、とびっきりのスマイルを浮かべて、画面を見ていた。いい笑顔だと思った。出来上がりが楽しみで仕方なくなる。

俺もそんなに合わせて、プリクラ機のカメラに目を合わせて、少しだけ笑う。プリクラ機の“3、2、1”という声の後に、フラッシュがたかれて撮影された。そしてたった今撮った画像が画面に映し出される。

「うん、なかなかよく撮れてるねー。最近のと違って目が大きくならないんだ」

「そうだね」

俺たちがそんなことを言っていると、プリクラ機が再び喋りだした。

“まだまだ行くよー! じゃあ次は……彼女が彼に抱きついちゃおう!”

…………。

……は? 今なんっつったこのさっきから妙にテンションが高くてウザい機械。

「え……あは、は。なんだこれ~」

は少し焦った顔をして笑っていた。

ーー彼女が彼に抱きついちゃおう=が俺に抱きついちゃおう。

「べ、別にいいよね。その通りにやらなくてもさ」

照れた顔でが言う。思った通り逃げる気だ。ーーだけど。

「こういうのは……楽しんだ者勝ちなんじゃなかった?」

「ーーえ」

俺はの両手首を掴み、自分の方へ引き寄せる。そして俺の肩と胸にの両の手を這わせるように置いた。

「ちょっ……歩夢くん……」

「ーーいいから、抱きつけよ」

はそのまま固まってしまい、俯いた。その瞬間に、プリクラ機からフラッシュがたかれる。

そして数秒後、プリクラ機の画面には、抱きつくとは程遠いが、俺の体に手を置きながら俯くと、そのを見つめる俺が写し出されていた。

「ダメじゃん、ちゃんと抱きつかないと」

「え、あ……あの……」

俺が画面を見ながら意地悪く言うと、は俯いたまま、ほとんど言葉になっていない声を上げる。

“じゃあ次は、彼氏が彼女を後ろから抱きしめちゃおー!”

そしてプリクラ機が発した次の言葉に、がぴくりと硬直した。

「ね、ねえ! なんかもういいから……普通に撮ろうよ……!」

するとこの流れに耐えきれなくなったが、赤い顔で主張する。

「やだ」

だが俺はそんなに冷たく言い放つ。そしての後ろに立ち……。

「後ろから抱きしめる……でいいんだよね」

「……え……う……」

の肩越しに手を伸ばし、後ろからきつく抱きしめる。風呂上がりのからは、シャンプやトリートメントの匂いなのか、フローラルないい香りが漂ってきた。

画面に映っているは、顔を真っ赤にして俯き加減だった。……かわいいな、と思った。俺は不敵に笑いながら、背後からの身体に腕を回している。

ほっそりした身体。ほのかに香る心地よい香り。好きな人が自分の腕の中にいる、という恍惚感。……ずっとこのままでいれればいいのに、と思った。

“3、2、1! 撮ったよ~!”

プリクラ機が喋る。俺は内心舌打ちしながら、しぶしぶから手を離した。しかし、画面にはやや不敵な面持ちをしている俺と、そんな俺に後ろから抱きしめられながら、照れているの画像が映っている。

もう、永久保存だな、これ。しばらくこれで生きていける。俺は本気でそう思った。

「もう……! なんなの、これ……!」

耳まで赤く染めているが、プリクラ機に向かって忌々しげに言う。

いや、俺にとっては最高です。ーーこのプリクラの仕様考えたやつ、神なんじゃない? 最初はテンション高くてうざいと思ってたけど、撤回する。どこの誰だか知らないけど、感謝しかない。

だけど、そろそろ撮影も終わりだろうか。

“次でラストだよ~!”

ほら、終わりだ。次はどんなやつだろう。でも、さっきよりおいしいシチュエーションなんてあるのか……。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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