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プリクラ No.1

 

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歩夢side

地元で凱旋パレードを行い、温泉旅館での祝勝会が終わったあと。

今日は実家には帰らず、ここに宿泊することにした俺は大浴場での入浴を終えて、旅館の廊下を歩いていた。

部屋へ戻る途中で、数世代は前かと思われるレトロなゲーム機が並んだゲームコーナーの前を通ると。

ちょうど同じように入浴を終えたらしいが、ゲームコーナー内をうろついて何やら思案していた。ーーそれも、浴衣姿で。

温泉宿の浴衣だから、花火大会や縁日で目にする女性物の華美な浴衣では無い。しかし、湯上りで髪をアップにし、リラックスした様子のからは、妙な色気が出ていて。浴衣の胸元からは白い肌も少し見えていて。

こんなのスルーするとか、無理だ。

俺はの方へと歩み寄る。

「何してんの」

あまり購買意欲をそそられないような景品が並ぶクレーンゲームのガラスの中を覗き込むに、俺が言う。

「あ、歩夢くん。お風呂上がり? 大浴場から海が見えていーねー、ここ」

「そうだね」

一緒に入れればさらにいいんだけどね。なんて思ったけど、怒られそうなのでもちろん言わない。

「あのさー、歩夢くんももらったと思うんだけど。部屋に置いてなかった? これ」

「え?」

が俺に見せたのは1枚の紙切れ。「ゲームコーナーのゲームどれでも一回無料」と記載されていた。

「そんなの、あったかなあ」

部屋には荷物を置きに行っただけで、備品などはほとんど確認してなかった。テーブルの上に旅館のマニュアルやら置かれていた気もするが、その中にあったのかもしれない。

「たぶんあると思うよ。それで、せっかく無料ならなんかやろうと思って」

「ーーなるほど」

「でもなかなかどれがいいか決まんなくて……。1人だとTVゲームっぽいやつかクレーンゲームかなあと思ったんだけど、……ほら、ここってゲームも景品も結構古いでしょ」

「それなら無理してやらなくても」

俺がそう言うと、はむっとした顔をして首を振った。

「ダメだよ! こういうのは楽しんだ者勝ちなんだから!」

「……そう?」

相変わらず前向きというか……何事も楽しもうとする精神をお持ちである。

「あ、それなら歩夢くんも一緒にやろうよー。2人なら選択肢も広がるし」

「ーーいいけど」

渋々了承したような雰囲気を出す。ーー実際は二つ返事でOKなのだが。

「うーん……エアーホッケーや卓球もいいねー。あ、でもアスリートの歩夢くんには勝ち目ないかな?」

「さあ……どうだろね」

コーナー内をうろつきながらが言う。別になんでもOKだ。とやるならなんでも楽しいはずだから。

「うーん、どれにしよ……あっ!」

ある物に目を付けたが、それに向かって駆け寄る。後ろからのんびりと俺はついていった。

「これにしない?」

が立ち止まったのはーープリクラ機の前。あまりプリクラには詳しくないけれど、デザインからすると相当古そうな機種だ。

「ーープリクラか」

「私、あんまり撮ったことないんだよねー。それにもう2年くらい撮ってないかも?」

「そうなの?」

「うん。海外にはないし……高校の時以来かな?」

若い女の子はみんな好きなんだと思っていたが、確かにの生活スタイルから考えると、あまり縁のあるものではないかもしれない。

「俺もあんまりないや」

「あーそうだよね。それならますますいい機会じゃない? これでいい?」

これを使えばと一緒に撮影したシールや画像が手に入るということ。

そんなチャンスーー逃すわけない。

「いいよ」

「やった! じゃあ早速ー!」

が近くにいた従業員を呼び、ゲーム無料券を渡す。従業員はプリクラ機をいじり、撮影ができるよう操作してくれた。

そして俺たちはプリクラ機の中へと入る。ーーすると。

“撮影モードを決めてね”

プリクラの機会が妙にテンション高く喋り出した。

「撮影モード?」

なんだそりゃ。こんなのあるのか?

そう思いながらも、画面を見やる俺。どうやら撮影モードは三つあるらしい。多人数モードと、わいわいモードと、ラブラブモード。

……って。 ラブラブモード……?

「え、何これ。どうする歩夢くん」


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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