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2004/7/28 新潟県村上市 スケートパーク No.1

 

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歩夢side

毎週水曜日の19時から、パークではボランティアの講師もやってくるスケートボードのスクールが開催される。

普段は俺が教えつつもほとんど自由に滑っているも、この時間帯はスクールに参加していた。

先週はまだ始めたばかりだったから、乗り方やブレーキの仕方など基本中の基本を教えて貰っていただけだったが、今日はもうちょっとレベルアップした内容のことをやるらしい。

とはいっても、まだまだそんな大それたことはしない。ということで、は他の初心者の子供に混じり、英樹がランプへのドロップインの仕方を教えていた。

「えー、怖いよー」

ランプの縁に立ち、底面をのぞき込みながらが英樹に向かって言う。確かに、勢いよく行かなければならないドロップインは最初はすごく怖い。慣れてしまえば、自転車を乗るようにほぼ無意識でできるようになるのだが。

「あは、最初はそうだよねー。でも大丈夫だよ、プロテクターも付けてるし、転んでも大した怪我はしないから」

「ーーでも……」

「それなら、最初は俺が両手を持っていてあげるから。一緒に滑るならどう?」

「それなら……できるかも!」

すると英樹とが両手を繋ぎ合い、顔を見合わせて微笑んだ。そしてそのまま「行くよー」「うん!」と言い合いながら、一緒にランプの曲線を下っていく。

ーーその光景を目にした俺は、心臓の奥がきゅっと嫌な感じに縮むのを感じた。

なんだこれ。初めての感情だった。どうしても、見たくない光景だった。なんでが英樹と手を繋いで楽しそうにしているのを見ると、こんな嫌な気持ちになるのだろう。

なんで、あそこで一緒に滑ってるのが俺じゃないんだ。

そう思った瞬間、達がいる初心者用のセクションから離れた場所にある上級者用のバーチカルにいた俺は、スケボーから降りて英樹と達の方へと駆け出していた。

「ん? どうした、あーくん」

そんな俺に気づき、英樹が尋ねる。英樹とは2人でのドロップインに成功したらしく、ランプの底面に2人で立っていた。

「……あ、えっと」

何を言ったらいいかわからずに口ごもる俺。そりゃそうだ、自分でもなんで嫌な気持ちになって、何をしに来たのかよくわからない。

ただ、わかってるのは1つ。

「あ……にーちゃん、にはおれが……おしえるから」

と他のやつと手を繋いで欲しくない。俺以外の奴と。そう思ったことだけは、確かだった。

「え、いいけど……。珍しいね、お前が人に教えるなんて」

「…………」

「でも、お前小さいのに、俺みたいにできんの?」

英樹が少し困ったように言う。確かにその通りで、4つ年上の英樹の体格は、俺たちよりも大人のそれに近い。

俺との背丈はほとんどかわらない。そんな俺が、の体を支えながら一緒に滑るなんて、到底難しい状況だ。

だけど、この英樹の言葉に頼りないと言われたような……男として負けたような気がして、俺はムキになった。

「……できる」

「ほんとかあ? 大丈夫かよ」

「ーーできるよっ!」

イライラして声を荒らげてしまった。滅多に大声を出さない俺だったから、英樹は驚愕したらしい。目をぱちくりとさせる。

しかしその後苦笑を浮かべた。

「まあ……そこまで言うんなら、いいけどさ」

「わたしはあーくんがいいよ〜」

するとが俺に向かってニコニコしながらそう言った。俺をフォローするだとか、英樹を説得するだとか、そんな気遣いを感じさせるような言い方ではなかった。

あーくんがやってくれるの? それなら私それがいい。ーーそういう風な感情が見えた気がして。

俺は酷く嬉しくなって思わず笑みが零れたが、汗を手で拭うようにして顔を隠した。

「じゃあのことはお前に任せるよ」

「ーーうん」

そう言うと英樹は、ランプの付近で彼の教えを待っている他の子供たちの方へと行ってしまった。

そして俺たちはランプの縁に2人で立った。はランプのボトムを覗き込むと、先ほどと同じように不安げな顔をする。

「やっぱりまだひとりでドロップインはこわいなあ……」

「ーー手、つなご」

ドロップインの初手の姿勢をに取らせ、俺は彼女の両手を取る。

「……大丈夫だよ」

ーー俺がついてるから、と心の中で付け足す。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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