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2004/7/22 新潟県村上市 スケートパーク No.2

 

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そして箱の中の猫が無事なことを確認して、満面の笑みをうかべる。ーーしかし。

「おいおまえ! よくもやったな!」

背中をさすりながら、たけしが憤怒の表情を浮かべながを睨む。

いまだのドロップキックに唖然としていた俺だったが、たけしの形相を見てはっとする。は猫が入った箱を抱えている。さっきのように機敏な動きはできないだろう。このままではたけしから殴る蹴るの暴行を受けてしまう。

そう思った瞬間、俺の体は自然に動いた。

英樹以外の人間とは、取っ組み合いの喧嘩はほとんどしたことがない俺。だが気づいたら、俺はたけしの脇腹に勢いよく頭突きしていたのである。

「ぎゃう!」

俺の石頭が見事にヒットし、変な声を上げて吹っ飛ぶたけし。は猫が入った箱を抱えたまま目をぱちくりさせてその光景を見ていた。

ーーうわ。勢いよくやりすぎたな。俺も頭いてーわ。……などと思っていると。

「あーくん! ありがとっ!」

「え……うん」

が頭をさする俺に駆け寄り、心底嬉しそうに微笑みながら言う。ーーこんなキラキラした顔をする子など、今まで見たことながなかった。

ーー女の子に対して、俺はその時生まれて初めて、愛しさのこもった「かわいい」という感情を抱いた。

「お、おい! てめえらー!」

すると倒れていたたけしが身を起こしながら叫ぶ声が聞こえてきて、俺ははっとする。

ーーヤバい、逃げよう。

! こっち!」

「ーーえ?」

そして俺は箱を抱えているの腕を掴んで、彼女を引っ張りながら走り始める。はそんな俺に必死になってついてきてくれた。

「ま、まてえええええ!」

背後からたけしの鬼のような絶叫が聞こえてきた。ーーたけしは俺より2回りはでかい。横にも縦にも。追いつかれたら小柄な俺たちは、一溜りもないだろう。

ーーなぜ、俺はそんな大きな相手に立ち向かうことが出来たのだろう。喧嘩では絶対に勝てなそうな相手なのに。

それはきっと……自分があいつにぶん殴られることの恐怖よりも、を守りたい気持ちの方が、大きかったから。

走ってるうちに、スケートパークの入口に母さんが立っているのが見えた。ーーよっしゃ。

「母さん!」

走りながら俺が叫ぶと、気づいた母さんがこっちを向いた。背後から聞こえてきていたたけしの声が止む。

「ん? どうしたの、二人とも」

「とみちゃ〜ん、ねこちゃんおちてたのー!」

母さんの前に辿り着いて、が言った。は周りの大人の真似をして、母さんを「とみちゃん」と呼んでいた。

「あら! まだ仔猫ねー、かわいいー」

が持つ箱の中を覗き込み、母さんが微笑む。俺はそんな二人の会話を聞きつつ、ちらりと後ろに視線を送る。

少し離れた場所で、たけしが悔しそうに俺たちを見ていた。こいつはうちの母さんが怒ると怖いことを知っている。俺達もキックをしたり頭突きをお見舞いしたりはしたが、から猫を奪っていじめようとしていたこいつの方が、きっと怒られる対象になる。

そして「ちっ!」と大げさに舌打ちをして、踵を返して、またパークの裏へと行ってしまった。近所だから家に帰るのかな。

「パークのみんなに貰い手いないか聞いてみるわね。いい飼い主が見つかるといいね、

「うん!」

母さんはそう言うと、猫が入った箱を受け取り、パーク内へと入ってしまった。

ーーすると。

「えへへ……」

何故か楽しそうに笑っている

「……? どうしたの、

不思議に思って俺が尋ねると。

「ちょっと怖かったけど……」

「ーーうん」

「なんか楽しかったね! あーくん!」

その瞬間、が浮かべていたのは、全開の笑顔。一気に桜が満開になったかのような、眩い微笑。

「……うん」

そんな彼女の煌めきに少し気圧されながらも、俺はなんとかそう返事をする。

ーー確かに、と力を合わせて一緒に敵を倒したような気がしたし、の腕を引っ張って走っている時も……なんだか強い連帯感を感じて。

よく分からないけど、楽しかった。

「……ふ。あはは 」

そう思ったら急におかしくなり、俺は思わず声を上げて笑ってしまった。すると、俺と顔を見合わせていたも、「キックしたー! わたし!」と言って、笑い出した。

ーー夏休み、楽しいなあ。

笑いながら、ぼんやりとそう思う俺。

それはきっと「夏休み」だからではなくて。目の前にいる少女の存在のおかげなのだろうけれど。

このときの俺はまだ、はっきりとそのことには気づいていない。







いじめっこの名前は考えるのが面倒だったので某国民的猫型ロボットアニメからです(笑)。

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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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