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2004/7/22 新潟県村上市 スケートパーク No.1

 

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歩夢side

は少し気まぐれなところはあったけれど、俺が教えたことはすぐに自分なりに理解し、物にしていくのが早かった。

ーー昨日、午前中にに出会ってから。俺は夕方までほぼ付きっきりでスケートボードの乗り方を教えた。その結果、プッシュして平面を滑るだけなら、わりとさまになるような状態にまでは上達した。

集中力があるし、センスも悪くない。冗談抜きで、夏休みが終わる頃にはかなりの上達が見込めそうだ。

また、俺はにスケボーの乗り方を教えている間も、合間を縫って自分の練習も結構行えていた。だからほとんどストレスはなかった。

むしろ、素直に俺が教えたことに反応し、みるみるうちに上達していくを見るのは、とてと楽しかった。ーー何より、口下手な俺に気兼ねすることなく、明るく接してくれると過ごす時間に、今まで感じたことのないような幸福感を俺は覚えていた。

一夜明け、今日も朝から母さんの車に乗ってスケートパークへ向かう俺。

とは仲良くなれたの?」

助手席に座る俺に、運転しながら母さんが尋ねる。英樹は後部座席に、もうすぐ2歳になる海祝と座っていた。

「……まあ」

女の子と仲良くなったなんて、なんだか照れくさくて、俺は曖昧に返事をする。

ーーまあ、この時点で俺はかなりには気を許していて、すでに彼女と会話をするのに一切の緊張はなかった。の壁を感じさせない態度が、俺を自然にそうさせていた。

「あ、やっぱりねー。なんとなくあーくんと合いそうな子だなって思ったの。ーーだからスケートパークにおいでって言ったのよ〜」

すると母さんは機嫌良さそうに驚きの発言をする。

明るく天真爛漫なと、無口で無愛想な俺。なぜ母さんは、そんな2人が合うと思ったのだろう。

しかし実際にと過ごすことに居心地の良さを覚えていた俺だったから、母さんの勘は見事に的中していた訳だが。

「ふーん……」

驚いた俺だったけど、なんて言ったらいいか分からず興味無さそうに答える。そうこうしているうちに、スケートパークへ到着した。

車のドアを開け、何故かはやる気持ちを抑えながら俺は入口の方へと駆け出す。しかし、走っている途中で、パークの建物の裏の方で女の子の声が聞こえた気がした。

それが妙にの声に似ていたので、俺はくるりと方向転換してパークの建物の裏へと向かった。

ーーすると、そこには。

「だめだよー、そんなことしたら」

「うるせえ。いいからよこせよ」

小さな段ボールを抱えて困った顔をしているの姿がまずは目に入ってきた。そんなと対峙しているのは、大柄の少年の姿。

パークにたまにスケボーを習いに来ている、近所に住む俺と幼稚園が一緒のたけしだった。

たけしは乱暴者で、女子や気弱な男子をいじててはよく先生に怒られていた。うちの母さんもたまに説教をしていた気がする。

俺の方がたけしよりスケボーが上手いからか、俺にはあまりちょっかいを出してくることはなかったが。

、どうしたの?」

俺が声をかけると、困り顔だったは安心したように笑った。

ーー俺の存在によってが笑顔になったようか気がし、何故か嬉しさがこみ上げてきた。しかし無表情で俺はそれを飲みこむ。

「ねこちゃんがおちてたの」

「ねこ……?」

自分が抱えている箱に視線を落とすに近づき、その箱を覗き込むと、小さな黒猫が鼻をひくひくさせながら俺を見ていた。

恐らく親猫とはぐれたか、捨てられたか。

「そのねこよこせよ。おれんちの犬とたたかわせるんだ」

するとたけしがが持つ箱に手を伸ばしながら言う。はその手から逃れるように後ずさった。

そしてたけしを睨みつけて言う。

「だめだよ! そんなことしたら死んじゃうじゃん! ねこちゃんちっちゃいのに!」

「うるせーな。別にいいだろそんなきたねーねこ」

そしてたけしは強引にに近づくと、素早い動きで猫が入った箱を奪ってしまった。俺はもちろん止めに入ろうとしたが、一瞬のことで間に合わなかった。

「へへーん! いただき!」

「かえして!」

「やなこった」

涙目になって訴えるを小馬鹿にするように言うと、たけしは箱を持ったままに背を向ける。そのまま猫を持ち帰る気のようだ。

俺は猫に触るのは苦手だけど、別に嫌いなわけじゃない。こんな小さな存在が犬に痛めつけられるかもしれないなんて、想像するだけで嫌悪感が沸く。

だから俺はたけしを呼び止めようと口を開こうとしたーーその時だった。

が動いたかと思ったら、次の瞬間、彼女は俺の横で飛んでいた。ーー文字通り、地を蹴って宙を舞っていたのだ。

そしてはそのまま両足を揃えて、たけしの背中に勢いよく蹴りを入れたのだ。

ーー英樹が前に友達と取っ組み合いの喧嘩をした時に同じことをやられていた気がする。確かあれは……そう、ドロップキック。

女の子が男の子を蹴り飛ばすなんて、俺はその時生まれて初めて見た。状況も忘れて、口をあんぐりさせて呆気に取られる。

「いってええええええ!」

もろに食らったたけしは、悲痛の叫びをあげ、抱えていた箱を投げ出した。そしてそれを、は見事にキャッチする。

「よかったー、ねこちゃんだいじょぶだったー!」


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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