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2004/7/21 新潟県村上市 スケートパーク No.1

 

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歩夢side

それは、幼稚園の終業式が前日に終わり、夏休みに入ったやたらと蒸し暑い日の出来事だった。

夏休みは素直に嬉しかった。パークで一日中スケートボードを滑ることが出来る。その頃の俺は英樹の背中を追っていて、早くにーちゃんのようにうまく滑りたい、1秒でも多くスケートボードを滑りたい……と考えていたから。って、今とあんまり変わらないな。

だから、夏休み初日だったその日も、俺は朝イチで日本海スケートパークにやってきて、ひたすらウォーリーを高く飛ぶ練習をしていた。汗で長め髪が頬に張り付くのも、気にせずに。

調子に乗って高く飛びすぎて着地に失敗した時に、パークの入口で誰かと談笑している母さんの姿が目に入ってきた。

母さんと話している人物達が、見慣れない姿だったので、俺はその場に座り込み、そちらを注視した。

「あら、そうなんですか〜。お隣の旅館に宿泊されているんですか?」

「ええ。子供の夏休みが終わるまで滞在する予定です。それでこちらのスケートパークが見えて、どんな場所か気になって来てみたんです。見学よろしいでしょうか?」

「ええ、もちろんです。ーー夏の村上は楽しく過ごせると思いますよ、海でも遊べますし、お祭りもいっぱいありますから」

「ええ、まだあんまり街を回ってはいないんですが、車を走らせた時に見えた景色は、とてもきれいでした」

母さんとにこやかに話しているのは30代くらいの男女。恐らく夫婦だろう。

ーーそしてその脇にちょこんと立つ、女の子。背丈から考えると、俺と同じくらい年齢だろうか。

その女の子が、村上という片田舎に存在するにしては、少々異質な存在に思えて、俺は目を細めてじっと見つめた。

幼稚園で毎日顔を合わす、村上の女の子とは、まるで風貌が違う。小さい顔に細長く伸びた手足。さらさらと風に靡く髪は、細く柔らかそうで、触ってみたいという衝動に駆られる。

シンプルなTシャツに派手なペイントがされたジーンズを履いていたが、とても洗練されたデザインで、近所のAEONには絶対に置いていないような服だった。

そして吸い込まれるように大きな瞳に、薄く小さい唇、白い頬。

まるで、テレビのドラマやCMで見るような女の子だった。

「うちの子が遊ぶ場所があるか不安だったんですけど、村上ならたくさんありそうですね」

その子の母親らしき人が穏やかに微笑みながら言うと、母さんが笑顔で答える。

「そうですねー! あ、よかったら、滞在中はここでうちの子たちと一緒に遊ばせましょうか? お嬢ちゃんと同じくらいの息子もいますし!」

すると、くるっと母さんが俺の方を向く。いきなり自分に話が向いてきて焦ったけれど、俺はふっと目を逸らしてそちらを見ていなかったふりをした。

「あーくん! ちょっとおいでー!」

俺を呼ぶ母さんの声に、俺ははじめてその3人の来客に気づいたように入口に顔を向け、立ち上がってゆっくりと歩き出した。

近寄ると、例の女の子はパーク内を滑る大人達をそのきらきらした双眸で眺めていた。ーー深い光が宿る印象的な瞳だった。

「息子の歩夢です。今年年長になりました。お嬢さんと一緒くらいかしら?」

「……こんにちは」

言いながら、母さんが挨拶を促すように俺の肩をぽんっと叩くので、俺は無愛想に挨拶をした。その女の子の両親と思われる2人は、穏やかそうに俺を見て微笑む。

そして女の子は、やっと俺の存在に気づいたのか、興味深そうにじっと俺を見た。ためらいのないその視線に、俺は少し虚を突かれる。

「うちの娘が1歳上ですね。今年小学生になったので」

「あら、そうなんですね。歩夢は大人しいから、少し大人の女の子に引っぱってもらうくらいがいいかもしれません。ーーあーくん。この子ね、お父さんの仕事の都合で、夏休みの間だけ村上にいることになったんだって。昼間スケートパークで預かることになったから、仲良くしてあげてね」


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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