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3/22 新潟県村上市 スケートパーク No.1

 

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ーーパレードと祝勝会の翌日。

瀬波ビューホテルに宿泊した私は、いつもより少し遅めに目が覚めた。今日、歩夢くんは特に仕事は入っておらず、村上市内を案内してくれる約束をしていた。

朝食を取り終え、部屋に戻ってスマホの画面を確認すると、歩夢くんから「パークで滑ってるね。よかったら来てみない?」とメッセージが入っていた。

歩夢くんが幼い頃から毎日のようにスケートボードの鍛錬をしていた日本海スケートパーク。Webサイトで画像は見たことがあったけれど、どんな場所なのか非常に興味があった。

私は部屋を出て、旅館に隣接しているスケートパークに急ぎ足で向かう。

スノーボードならもう何十回と歩夢くんの美しいRUNを見たけれど、そういえば彼のスケボー姿は生で見たことがない。

きっとスノーボードと同じように、スケートボードも滑らかで華麗な動きをするのだろう。

スケートパークの前に着いた私は、わくわくしながらその重い扉を開ける。

すると、目に飛び込んできたのは。

ーーえ。

私はその光景に心底驚愕し、固まる。

ランプ(横から見て縁を切りとったような形のスケボー特有のセクション)で、滑らかに勢いよく滑り、縁ギリギリで踏み切って難易度の高そうな技をメイクする歩夢くんの姿。

スノーボードの時に魅せる歩夢くんの姿と引けを取らない、華麗な舞い。ある程度は想像していたけれど、改めて見るとやはり迫力があって、心を奪われる。

ーーしかし、私が驚いたのは歩夢くんが美しく滑るその姿では、ない。

古い体育館を改装したかのようなスケートパークの内部。そこにな大小さまざまなランプやバンク(坂)、レールといったセクションが並ぶ。

なんだ、ここ。ーー私は、この場所を。

知っている。

瀬波ビューホテルの内部も、妙に既視感があった。でも古い旅館なんてどこも似たような造りだし、気のせいだと思って私はそこまで気にとめていなかった。

だけど、ここは。この日本海スケートパークは。

そんな気のせいなんかじゃ言い表せない。確実に見覚えがあった。

ーーそして、決定的なものが壁に貼ってあったのを私は見つける。

パークの壁に少し曲がって貼り付けられているのは、端が少し黄ばんでいる古びた一枚の写真。

その写真に映っていたのは、男の子にしては少し長めの髪をさらりと靡かせた、5、6歳の少年の姿。スケートボードごとジャンプをして、そのままきれいに着地をする、まさにその瞬間を撮影したものだった。

ーーこれは。この写真は。

「ーー、どうしたの?」

写真を見て硬直している私を不審に思ったのか、スケボーを足でピックアップした歩夢くんは、私の傍らに歩み寄ってきた。

「この写真……」

「ん? ……ああ。俺の小さい頃」

「歩夢くん……なの? この子……」

「え? そうだけど……」

呆然としてかすれた声を上げる私を、歩夢くんは不思議そうに眺める。

ーー理解が追いつかない。だって、この写真は。この写真の少年が、歩夢くんだとしたら。それは……。

その時だった。

「ちょっと、あーくん! こんなとこにいたの? かーさん探してたよ〜。今日は家に帰ってくるのかって聞かれたんだけど」

パーク内に海祝くんが入ってきて、少し責めるように歩夢くんに詰め寄りながら言う。

「……あ。ごめん。あとでと行くって言っといて」

「もう、ちゃんと自分で言ってよね〜」

歩夢くんと海祝くんの会話を、私は呆然とした面持ちで眺める。

ーーだって、今。

「ーーねえ。今海祝くんさ、歩夢くんのこと……」

「ん? ――ああ。「あーくん」のこと? 昔はにーちゃんみんなにそう呼ばれててさー。俺もいまだにたまにそう言っちゃうんだよねー。……あ、じゃあ俺かーさんに呼ばれてたから行くねー」

何気なくそう言って、海祝くんはパークから出ていってしまった。

ーーあーくん。歩夢くんは、「あーくん」なのだ。

混乱していた頭がやっと整理される。霞みがかっていた遠い記憶が、パズルのピースを埋めていくかのように、鮮明に繋がっていく。

忘却していたあの男の子の呼び名。顔。思い出。すべてが蘇る。

「あーくん、なの……?」

私は歩夢くんをじっと見つめて、恐る恐る尋ねるた。ーーすると。

歩夢くんは、しばしの間ぼんやりしていたけど、突然はっとしたような顔をした。そして彼も私に、恐る恐るこう問う。

……?」

ーー幼少の頃、私が周りに呼ばれていた愛称を歩夢くんは呟いた。私が1度も彼には教えたことのないはずの、呼び名。彼が絶対に知る由もない、事柄。

私は壁に貼られた「あーくん」の写真を前に立ちすくむ。

ーー私は小さい頃に父親からお古のカメラを貰ってからというもの、手当たり次第に写真を撮っていた。三つ子の魂百までとはよく言ったもので、その頃からカメラのことばかり考えていたのだ。

だから、自分が撮影した写真なのか、他人が撮影した写真なのかは、瞬時に判別することが出来る。ーーそれが、どんなに昔の写真でも。

ーーそう、このパークの壁に貼られている、一枚の黄ばんだ写真は。

間違いなく私が撮影したものだ。幼かった私自身が、シャッターを押して撮影した、「あーくん」の写真に、間違いなかったのである。







村上は食べ物本当においしいです。海もきれいだし観光におすすめです。

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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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