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3/21 新潟県村上市 瀬波温泉旅館 No.1

 

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「……実はさ、

「ーーえ?」

「パレードの最中からちょっと頭痛がしてたんだ」

「え!?」

苦笑を浮かべながら言う歩夢くんの顔は、確かによく見るといつもより青白い。

ーーUSオープンが歩夢くんの優勝により幕を閉じ、スノーボードハーフパイプの今シーズンも終結した、3月下旬のこと。

オリンピックで銀メダルを獲得した歩夢くんと私は、凱旋パレードをするために彼の地元の新潟県村上市を訪れていた。

パレードも、その後に市民ホールで行なった報告会も、それはそれは市民の熱烈な歓迎っぷりだった。

村上の人がいかに歩夢くんを愛して応援してくれていたかが、私は肌で感じることができた。まあ、それは歩夢くん自身が村上を愛してやまないからだからだと思うが。

現在は、夕方から瀬波温泉の宿で開かれる祝勝会のため、宿の一室で私たちはしばしの休憩を取ろうとちょうど部屋に入ったところだったのだが。

「ーー大丈夫?」

私が心配して問うと、歩夢くんはやはり少し顔色が悪い状態で、ぎこちない笑みを浮かべる。

「んー、まあ少し休めば大丈夫と思う。祝勝会は出れるよ」

「そっか。無理しないでね」

「うん」

そして歩夢くんは畳の上に座り込み、背中を壁につけてリラックスした姿勢を取った。

「祝勝会が始まるまで、横になったら?」

なんなら少し昼寝でもした方がいいくらいだ。オリンピックが終わってから1ヶ月以上経つが、メディアの対応に忙しい歩夢くんの睡眠時間は相変わらず短めだった。

「んー、そうしようかな」

「うん! あ、私頭痛薬買ってこようかな?」

「いや、そこまでしなくても大丈夫。ーーそんなことより」

「ん?」

すると歩夢くんが壁に背を持たれかけさせたまま、私をじっと見つめた。何か欲しいものでもあるのかな、と思い私は彼の隣に近寄ってかがむ。

ーーすると。

「膝枕してくれない?」

歩夢くんが私の手首を掴んで私をこれでもかというくらい引き寄せて、囁くように言った。

「な、ちょっと……!」

私は反射的に歩夢くんから離れようとするが、歩夢くんが私の手首を離してくれず、それは適わない。

「いいじゃん、減るもんじゃないし」

不敵に笑いながら、どこか妖しく言う。

「そ、そういう問題じゃなーい! いいからさっさと寝て頭痛を直してよ!」

「だから、女の子に膝枕してもらった方が早く治んの」

「はぁ!?」

「男とはそういう生き物です」

歩夢くんがいやにきっぱりと、そう断言する。

そ、そうなのか……? そういうものなのか……?

ま、まあ、そこまで言うなら……。確かに別に減るもんではないし、それ以上のことは今のところ求めていないようだし。

ーーいっか。

「……きょ、今日だけだからねっ」

私は彼の傍らで正座をし、なんとなく恥ずかしかったので目をそらしながらつっけんどんに言う。

「ん、ありがと」

するとそんな私の様子などお構い無しの歩夢くんは、楽しそうな口調でそう言うと、私の膝の上に頭を乗せて寝転んだ。

私は壁に背をもたれかけると、おずおずと彼に視線を戻す。

瞳を閉じて休息を取る歩夢くんの頭が、私の膝の上にある。相変わらず長いまつ毛に、通った鼻筋、厚めの色っぽい唇。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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