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ドレスアップ No.7

 

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会場へと戻る歩夢くんの背中を、私はぼんやり眺め続けていた。そして暗闇の中なので、やがて見えなくなってしまった。

私は深く嘆息をし、彼の背中を追うのをやめる。

ーー歩夢くんに、あんなことをされたら、私……。

あの後、思わず口走ってしまいそうだった言葉。思い返すと恐ろしくて、私はあの瞬間に電話をくれた来夢くんに、心の底から感謝の念を抱く。

信念を持って生きていて、それでいて見た目もかっこよくて、スノーボードも世界一で。

そんな人にキスなんてされて、心が奪われない女の子なんて、存在するのだろうか。

ーー私は、歩夢くんのことを……好きになってしまっているのだろうか?

ただ、かっこいい人に振り回されているからドキドキしているだけのような気もして。ーーだけど、歩夢くんだから、彼だから生まれた恋心のせいで、心臓が落ち着かないような気もして。

正直、いまだによくわからない。

ーーだけどあなたのような完璧な人が、私に恋をすることなんてきっとなくて。ちょっかいを出すのは、たぶん気まぐれ。

毎回結局そういう結論になって、私は自分の心に蓋をするのだ。

だけど、確かなことが1つある。

「あ、すいません。会場にいた方ですよね……?」

不意に、若い見知らぬ男性が私に話しかけてきた。なぜかは知らないけけど、顔を赤くし、少し落ち着かない様子だった。

「ーーそうですけど」

私はあまり表情を変えずに淡々と答える。

「やっぱり。ーーすごく……あの、きれいですよね」

「ーーはぁ」

「もし、この後お暇ならお食事でも行きませんか?」

「…………」

今日はやたらとこういうのが多い。パーティーだから、みんな気が大きくなっているのだろうか。

ーー今日の、綺麗だから。

その時、そんな歩夢くんの言葉が突然思い起こされる。不覚にも少し口角が上がってしまった。ーーだって、やっぱり嬉しかった。歩夢くんにそんな風には褒められることは。

「あ、すいません。間に合ってます」

私はその表情のまま、目の前の男性にはっきりとそう言った。にやついたまま言ったから、変な女だと思われたかとしれない。

「ーーえ。いや、でも。少しでも……」

「ごめんなさい。本当に間に合ってるんです」

それでも食い下がる男に、私はにべもなく言い放つ。するとやっと男は諦めたのか、渋い顔をして私に背を向けて、去っていった。

ーーそうだ。私は今、間に合ってる。今は歩夢くんに振り回されることで、いっぱいいっぱいなのだから。他の人なんて、入ってくる隙間なんてない。

歩夢くんを本当に好きなのか、彼がかっこよすぎるから心臓が勝手に反応しているだけなのか。ーーよくわからないけれど。

確かなことは、そう。

歩夢くんの傍に、いたいと思っていること。まだ自分の気持ちは不明瞭だけど。

もう少し。このまま、傍にいさせてね、歩夢くん。







タキシード歩夢くんが反則級のかっこよさだったので作った話です。
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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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