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3/11 コロラド州 ベイルリゾート コテージ No.3

 

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「ん、なんでもない」

俺は軽く笑ってそう答える。「そう?」と言うと、再びは友基と樹里の変貌っぷりについて語り出した。

ーーもう少しこのままでも、いいか。

君がマネージャー兼通訳として俺のそばにいてくれる間は。

時々不意打ちにキスをして「意味わからない!」と赤面するかわいい姿は、恋人同士になったら見れなくなってしまうのだから。

と、俺が思っていると。

「にーちゃん」

「何?」

いつの間にやら俺の傍らには、海祝が立っていた。そして小声で俺に尋ねてくる。

には結局告白しないの?」

「……お前らに邪魔されたせいで決意が鈍ったの」

少し嫌味混じりに言ってやる。しかし海祝は大して気にした様子もなく、「ふーん」と言うと。

「ま、にーちゃんがそうしたいならそれでもいいんじゃない。ーーけどね」

「けど、何?」

すると海祝は俺に向かって、にやっと大胆に、不敵に笑って見せた。

「あんまりもたもたしてると、取られちゃうよ? 例えばーー俺とかに」

「…………はっ?」

想像だもしていなかったことを、15歳の実の弟に言われ、俺は硬直する。だが海祝はそんな俺のことなど気にもとめず、と友基の間に割って入った。

そして「ー、帰りの飛行機隣でもいい?」なんてちょっとかわいく言う海祝。そして「え、別にいいけど」なんて軽く承諾する

ーーおいおい。待てよ。ふざけんな。

俺はつかつかとと海祝の元に歩み寄り、にべもなく海祝にこう言い放つ。

「……だめ。は俺の隣だから」

「えー、いーじゃん別にさ。にーちゃんはいつもの隣なんだから」

「ダメだっつってんの」

「なんでさ」

「しつこい。だっては俺の……」

言いかけて言葉を止める俺。俺の……なんだ。

「俺の、何?」

ニヤニヤしながら聞いてくる海祝。は神妙な面持ちをして、その魅力的な瞳で俺をじっと見つめていた。

「俺の……その……マネージャー、だから」

「……なんだ。言うかと思ったのに。つまんない」

海祝が小声でぼそりと呟く。

「え? 何を言うかと思ったの?」

意味がわかってないが、海祝に尋ねるけど、俺は間に入ってちょっと慌ててこう言った。

「あ、なんでもないから。気にしないで」

「ふーん?」

「……ま、仕方ないですね。はにーちゃんのマネージャーだもんね」

“マネージャー”という単語をやたらと強調して言う海祝。「とっとと言いたいこと言えよ、本当にのこと取るぞ」とでも暗に言われているような気がした。

そして海祝は、樹里に怒られたいとか、いやちゃんだとか、くだらないことをいまだに論争している、英樹と來夢の元へと行ってしまった。

のことを取るとか本気かどうかは知らないけど、弟にまでおちょくられるとは。情けないったらありゃしない。

ーーだけど。

「……飛行機、海祝くんの隣でも別にいいんだけどさ」

が何気なく言った言葉に少しショックを受ける俺。ーー別にいいのかよ。俺は絶対に君の隣がいいのに。

しかし次のの言葉に俺は有頂天になる。

「やっぱり歩夢くんの隣がいいな、私。いつもそうだから、他の人だと落ち着かなそう」

屈託なく、無邪気な微笑み。その大きな瞳は、相変わらず煌めいていて眩しい。

ーーどんな理由であれ、君が俺の近くにいてくれるなら、もう少しこのままでも、いいよな、やっぱり。

「ーー俺もの隣がいい。さっきも言ったけど」

そして俺はの髪の毛を撫でながら言う。例によって、頬を赤らめる

この光景が、すでに日常になりつつある今も、そんなに悪くないから。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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