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3/10 コロラド州 ベイルリゾート ベイルヴィレッジ No.2

 

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歩夢side

祝勝会もたけなわになってきた頃、來夢の高いテンションに適当に相槌を打っているうちに、隣にいたはずのの姿がいつの間にかなくなっていた。

最初はトイレかと思って待っていたのだが、それにしては遅すぎる。どこへ行ったのだろう? あたりを見渡しても彼女の姿はない。

気になった俺はさりげなく席を立った。店内にいないとなると、外か?

店の出入口から外へ出ると、すぐにその愛しい姿があって、俺は安堵する。はレストランのテラス席に座り、夜風に髪を揺らしながらぼーっと外を眺めていた。

「ーー

「ん……? あ、歩夢くん」

突然俺に声をかけられたからか、一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにいつもの柔和な笑みを浮かべる

が座っている木製の二人がけのベンチの、彼女の隣に俺は座る。

「気づいたらいなかったから、どこに行ったのかと思ってさ」

「あー……ごめんね。今回いろんなことがあったから……ちょっと一人でぼーっとしたくて」

「いろんなこと、ね」

去年の俺の怪我を起因とする恐怖やら、樹里の登場やら、ぶっ倒れ事件やらーー怖さを乗り越えてやらの優勝やら。

俺にとってもこの1週間は怒涛の毎日だった。その全てにも関わっているから、彼女にとってもさぞ騒がしい日々だっただろう。

「あ、じゃあごめん。一人になりたかったのに、俺来ちゃって」

「ーーううん」

はひと呼吸おいてから笑みをさらに深く刻んでこう言った。

「ーー歩夢くんなら、素の自分出せるからいいや」

「…………」

不意打ちで微笑みながらそう言われて、俺はにやけそうになり、思わず目を逸らす。ーー何この人。くっそかわいいんですけど。

「歩夢くん?」

「あ、いや……。なんでもないよ」

突然顔を背けた俺を不思議に思ったらしいが、俺の顔をのぞき込んできたので、慌てて俺は無表情を作り、彼女の方を向く。

その瞬間、の右耳が銀色に光ったのが見えた。

ーーそうだ。交換しっぱなしだった。

「ーー。ピアス……っていうか、お守り。ありがと」

「あ! 交換したままだったね! ーーお守りの効果はあったかな」

「ーー抜群にね」

俺が口角を上げて言うと、は気恥しそうに、しかし嬉しそうな笑みを浮かべた。

「そ、そう? それならよかった」

「これのおかげで怖くなかった。ーーわりとマジで」

「……わりとマジかあ」

「うん」

そう言って俺たちは顔を見合わせ、二人で笑い合う。本当にピアスのお守りは絶大な威力を発揮してくれたから、心から俺はに感謝している。

だけど、なんだか照れくさいのとこみ上げる嬉しさのやり場に困り、ちょっと冗談まじりに言ってしまう。

「ーーピアス元に戻そっか、

「あ、そうだね」

別になんなら一生このままでもいいけど、ずっと付けっぱなしにしておくと効力がなくなってしまうような気がして。

ーー本当に困った時や、救いが欲しい時の取っておき。の所持品を身につけるのは、そういう時だけにしたいようにも思えた。

「ーーあれ」

俺が自分がつけていたのゴールドピアスを外すと、から少し困ったような声が聞こえてきた。

「どしたの」

「指先が冷えてうまくピアスが取れなくて……」

「ーーあ、マジか」

「うん……」

「じゃあ……俺がとってあげる」

「ーーえ!?」

「いいから。ーー動くなよ」

そして俺は、戸惑うに構わず半ば強引に彼女の耳たぶを触る。触った瞬間ぴくっと肩を震わせたのがいやにかわいかった。ーーいや、かわいいだけじゃない。

その仕草と寒さで少し赤くなった耳たぶが、やけに煽情的に感じられて。

ーーそして、さらに。

「ーー別に、私はピアスこのままでもいいけどな」

の耳からピアスを外した俺に向かって、がはにかみながらそう言ったのが、とどめだった。

ーーあ、もう無理。耐えらんない。

「……

「ん?」

そんな俺の欲望に何も気づいていないは、濁りのない双眸を俺に向けてきた。俺はそんなの頬をつかみ、彼女が次の動作をする前に。

自分の方にの顔を引き寄せ、優しく口付けを交わす。

「ーー!」

からは声は聞こえなかったが、驚きの気配を醸し出しているのがわかった。しかし特に抵抗する素振りは感じられなかった。 は俺のキスを静かに受け入れていた。

そして10秒ーーいや、数十秒かもしれない。けっこう長い間、の唇を支配したあと、俺は彼女を解放する。

「……もう……なんで、歩夢くんは……」

そしては顔を俯かせてぼやく。膝の上に載せた両手は、握りこぶしを作り少し震えていた。

「なんでって何が?」

そんなの顔を覗きこんで、少し意地悪く尋ねる。俺に迫られて挙動不審になるが、本当にかわいくて大好きだ。ーー悪趣味だけど。

「なんで……私にいつも。私なんかに、いつもそんなことするの……?」

「…………」

心底分からないという口調だった。ーーっておい。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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