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3/9 コロラド州 ベイルリゾート コテージ No.5

 

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歩夢side

「ーーいなかったよ。樹里のコテージにも、二人とも」

「じゃ、じゃあどこ行ったんだよ二人とも!」

海祝の言葉に、來夢が狼狽えた声を上げる。コテージのリビングで、俺たちは全員落ち着かない様子でうろうろしていた。

から「樹里と会ってくる」と連絡があって1時間半後。

ちょっと遅くないか? 様子見てくる?と俺達の間でそんな話になり、海祝が樹里のコテージへ行って様子を見てきたのだが。

鍵の空いていたコテージはもぬけの殻で、2人の姿はなかったとの事だった。

ーー一体どこへ行ったのだろう。が俺に何の連絡もなしに、遠出することは考えられなかった。胸騒ぎが大きくなっていく。

「LINEで連絡してみたら?」

「あ。そうか」

英樹に言われはっとした俺は急いで「今どこ?」というメッセージをに送る。

ーーしかし。

「だめだ……」

メッセージは既読にならず、そのあと通話も試してみたが、繋がらない。まだ連絡先から消していなかった樹里にも連絡を取ってみたが、同じ結果だった。

「おいおい、やべーんじゃねーの!?」

「ーー探しに行く」

俺は踵を返し、コテージから出ようとする。ーーしかし。

「にーちゃんと來夢さんはダメ」

「ここで待ってなよ」

扉の前に海祝と友基が立ちふさがる。

「ちょ! なんでだよ!?」

俺と共に外に出ようとした來夢が、非難の声を上げた。

「二人とも明日ファイナルなんだから! ダメにきまってるでしょ!」

「今日はもう休まなきゃダメだよ」

「そ、それはそうだけどよ! でもいてもたってもいられねーよ!」

「…………」

2人の言う通りだ。明日本気で勝ちに行くつもりなら、と樹里探しは海祝や友基、英樹に任せて俺と來夢はコテージに残った方が得策だろう。

ーーだけど。

「ーー無理だ」

「え? 何、にーちゃん?」

「こんな状況で待ってる方が精神的に体力使う。だから探しに行く」

「……! ダメだってば!」

「ーー頼むよ、海祝」

俺はまるで懇願するように、海祝の目をじっと見つめる。普段海祝に頼み事をすることなんてほとんどないので、そんな俺の目を見て海祝はたじろいだようだった。

そして海祝が何かを言いかけたーーその時。

「ん? なんか音聞こえねーか?」

俺たちの様子を静観していた英樹が、耳をそばだてるポーズを取りながら訝しげな顔をする。それにつられて俺たちは全員黙り込み、耳をすませた。

ーーすると。

コテージの出入口の扉から、微かにコンコンと音が聞こえた。

、か?

俺はその音を認めた瞬間、素早い動作で扉を開けた。

すると、扉を開けた先には。

……!」

何故か樹里を背負っているが、青白い顔をして立っていた。は俺の顔を見た瞬間、一瞬だけ安堵したかのように微笑んだ。

そして倒れ込むようにコテージの中に入ってきた。ーーいや。

実際に彼女は、その場に倒れ込んでしまった。

!? どうした!?」

慌てて傍らでしゃがみ、うつ伏せで倒れるの背中を揺らす。すると、今まで背負われていた樹里がその横で座り込む。

ちゃん……!? ど、どうしよう! 私のせいだ……!」

「樹里、どういうこと!?」

友基の問いかけに、泣きそうな顔をしながら樹里が答える。

「私が外で落とした大事なものを探すのを手伝ってくれて……。でもその後に私が足を怪我しちゃったから、ここまで運んでくれて……! だけど、ちゃんがこんなことになるなんて思わなくて……ご、ごめんなさい! 私のせいだ……!」

そう言うと、樹里は座り込んだまま顔を覆って泣きじゃくる。

「と、とにかく病院へ!」

「救急車か!?」

「そうだね!」

海祝と來夢、友基の会話を聞き、英樹がこの地の救急搬送用の番号を調べだした。ーーしかし。

「……そこまでじゃない、です……」

うつ伏せになっているが、か細い声ながらそう言った。

……!?」

「おー、歩夢くん……」

はゆっくりと、伏せた状態から仰向けの態勢になり、寝そべったまま力なく微笑んだ。

能天気そうな声を出そうとしたらしいが、掠れた声音が彼女がひどく弱っていることを物語る。

ーー心配かけさせまいと、呑気なふりしやがって。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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