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1/24,コロラド州 アスペン コテージ no1

 

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歩夢side

――今日は風が強い。コテージの周りの木々を揺らす強風の音で、俺は目覚めた。

この暴風では、今日は練習を控えた方がいいだろう。

リビングに向かうと、キッチンには友基が立っているのが見えて、フライパンで目玉焼きを焼いていた。

トースターからはパンの香ばしい匂いが漂ってきていて、寝起きで反応が鈍かった胃袋が少し活発に動いてくる。

しかし俺は、ここ2、3日――が俺の通訳になってからの、いつもの朝の光景と異なっていて、少し落胆する。

「……は? 起きてないの?」

「そうみたいだよー。疲れてるのかな? だから今日は俺が用意してまーす」

「ん、さんきゅ」

友基に軽く礼を言いながら、コーヒーカップを戸棚から出す俺。

が来てからは、朝食の準備は彼女がしてくれていた。俺達が頼んだ訳では無いが、自発的に彼女はやってくれていたのである。

「仕事あんまりないからこれくらいはやらないとねー」

は言っていたけど、少しでも練習に専念したい俺たちにとってはありがたいことこの上なかった。

――それに、やっぱり女の子が用意してくれるご飯というのは、野郎のそれとは違い何倍も美味しく感じた。

周囲に大した食材が売っていないので、が用意するのも今日のようなパンや目玉焼きくらいだけど、どうしてこうも味覚に違いを与えるのだろう。

の用意した飯がよかったー……って思ってるでしょ?」

「……そりゃ、男なら誰でも思うでしょ」

「まあねえ」

気を悪くする素振りも見せずに友基は半熟に焼きあがった目玉焼きをフライ返しですくい、皿にのせる。

絶妙の焼き加減に見えた。相変わらずの女子力の高さである。

――それにしても。

、どうしたんだろ」

「そうだねえ。珍しいよねー」

「……ただの寝坊かな」

「どうだろー? ご飯できたら呼びに行ってみよっか」

「うん」

俺達が少し心配になっていると、リビングの方で物音がした。

あ、起きたかな? の姿を期待し、音がした方に目を向ける。

ーーするとそこには。

「……うーす」

眠そうな目を擦りながら立っていたのは、スウェット姿の片山來夢だった。

「……なーんだただの来夢か」

「ほんとだ。期待して損したよねー」

軽く落胆した俺の言葉に、友基が大げさなまでにがっかりした口調で同意する。

「はっ!? 何だよそれー!」

俺たちの冷たい態度に目が覚めたのか、憤慨する来夢。ーーしかし。

がさあ、まだ起きてこないんだよねえ」

「えっ!?」

友基の言葉に、怒りの表情を不安げな面持ちへと来夢は変えた。

「え、だっていつも最初に起きて飯用意してくれてるんだろ? まあ、俺が起きた時にはお前らも起きてるけどさ」

「来夢は朝弱いもんねえ。まあ、だって朝ゆっくりしたい日もあるとは思うけど」

「……でもそれにしたって遅くない?」

壁にかけられている時計を見て俺は言う。時刻はすでに9時を過ぎていた。洗濯やら掃除やらもやってくれるは、7時頃には起きていたようなのでやはり遅すぎる。

「俺、やっぱ部屋見てくるわ」

「待て歩夢! 俺も行く! ずるいぞ!」

「……あ、そう」

いつもの調子の来夢に少し呆れながらも、俺たち2人はの部屋へ向かおうとした。

――しかし、その時だった。

「あ、おはよ」

がリビングに入ってきたのだった。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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