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3/9 コロラド州 ベイルリゾート USオープン会場 No.2

 

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「盗撮……?」

「あー、いや。なんでもない、こっちの話」

「ふーん……?」

腑に落ちないが、そんなことよりも樹里ちゃんのことを解決したかったので私はスルーすることにした。

「まあ、樹里のに対する態度は……俺からはなんとも言えないけど」

「……だよねー」

「樹里がにーちゃんに振られるのは仕方ないよ。……あの二人、根本的に合わないから」

「あ……」

歩夢くんから話された、樹里ちゃんが過去に「スノーボードの大会に出るのをやめてほしい」と言った件について思い出す。

もそう思うでしょ?」

「……少しは、わかる」

「でも俺はとにーちゃんは合うと思うよ」

「ーーえっ!?」

樹里ちゃんの話をしていたかと思いきや、突然自分が登場して私は驚きの声を漏らす。

「な、なんで!?」

「だってさ。ーーにーちゃんってちょっと変でしょ、正直」

「変……?」

「いい意味でね。食べるものも遊ぶのも学校に行くのも我慢して。いくら夢だっつったって、普通はこんなにストイックに生きれないよ」

海祝くんは、ハーフパイプの中で現在も練習にひたすら専念する歩夢くんを細目で眺め、どこか呆れたように、しかしどこか誇らしげに言う。

「そんなにーちゃんについていける女の子なんて、少ないよ。普通は楽しくデートして、おいしいもの食べて、できるだけ一緒にいたいって思うでしょ」

「……そうだね」

歩夢くんのことが好きすぎる樹里ちゃんは、歩夢くんがすることなすことなんでも受け入れるだろう。だけど、本当は歩夢くんともっと一緒にいたくて、自分をもっと見て欲しくて。

恐らく、恋人だった頃、かなりのことを彼女は耐え忍んでいただろうと思う。ーーきっと歩夢くんにはそれが分かっていて。恋人に苦しい思いをさせるのが嫌で、別れを告げたのではないかと思う。

「でもはさあ……違うでしょ」

「ーーへっ!?」

「なんかってにーちゃんと同じ匂いがする。うまくいえないけど……女々しくないんだよ、は。にーちゃんの変なところ、素直に受け入れて理解してる。ーー相当変だよ、も」

「変って……」

海祝くんに変呼ばわりされて引きつった笑みを浮かべる私。

「だから変同士お似合い。そう思ったの、俺は」

ふふっと小さく笑いながら、私を見て海祝くんが言う。

ーーお似合い、なのか?

変とか言われて少し不本意だが、あの歩夢くんとお似合いと言われて、心が浮き足立ったような、足元がふわふわするような、落ち着かない感情になる。

なんでこんなに嬉しいような気持ちになるのだろう。

弟の海祝くんが言ったからといって、歩夢くん本人に言われたわけじゃないのに。ましてや歩夢くんは私のことなんて相手にするわけは、やっぱりいくら考えてもありえないのに。

ーーそれに私だって、歩夢くんを好きだなんて大それたこと、考えてはならないのに。

「あ、ごめんね。樹里に嫌われたかもしんないって相談だったのに、話逸れちゃって」

「ーーううん。話聞いてくれて、ありがとね。ちょっと気が紛れたよ」

私が微笑んで言うと、海祝くんは少し照れたような顔をして目を逸らした。

「ーーこういうとこか、にーちゃんがはまったのは。……いや、ダメだって、俺。にーちゃんには勝ち目ないから」

そしてまた1人で何やらぶつぶつ言う海祝くん。今日はやたら独り言が多いけど、なんだろ。

「何?」

「い、いやなんでもないよ! ーーそれより、にーちゃんまだ練習してくつもりかな」

休憩中なのか、パイプの縁に座ってパイプ全体を眺めている歩夢くんに視線を合わせて言う海祝くん。

今日はファイナルの前日だから、軽くすませるのかと思ったけれど、たぶん歩夢くんにとって納得のいく滑りはまだできていない。

「ーーたぶんね」

ゴーグルを額にあげて、少し険しい表情をしている歩夢くんを見て、私はつぶやく。

そして結局、「もうちょっと粘るから、先に戻ってて」と歩夢くんに言われ、私たちは彼を残しコテージへと戻った。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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