記事一覧

3/9 コロラド州 ベイルリゾート USオープン会場 No.1

 

Your name






side

明日はとうとう、USオープンのファイナルだ。

ハーフパイプの会場に赴き、前日練習に明け暮れる歩夢くんと来夢くん。英樹さんと海祝くんは残念ながらセミファイナルを通過することはできなかったけれど、一緒に練習に参加している。

歩夢くんは、特に苦手な左側の壁で、難易度の高い技をメイクするための練習を、絶え間なく行っていた。ーー去年怪我をしたのも左側の壁で1440を決めようとした時。

もともと苦手な上に、恐怖心もまだ完全には払拭できてはいない左側。バックサイドコーク1260の着地が、今日はどうしても乱れてしまう。

ーーと、いう状況で。歩夢くんのマネージャーとして私も、本来なら明日のファイナルの心配をしなきゃならないのだが。

私の頭の9割を支配しているのは、昨日の出来事。

歩夢くんからのプレゼントによる喜びで満たされる中での、樹里ちゃんの私へのあの言動が、不安で気になって仕方がない。

樹里ちゃんが、何か私に良くない感情を抱いていることは確かだ。私がいない間に、歩夢くんと何やら話をしているようだったが。

その会話の内容に、私にマイナスの想いを抱く要素があったのだろうと予想できる。

歩夢くんは知ってるっぽいけど、「今は聞かないで」と言うし。せっかく仲良くなった樹里ちゃんとこのままでいるのは嫌なので、歩夢くんに小一時間問い詰めたいのだけれど、明日にファイナルを控えている彼の気を害すことはしたくない。

ーーはあ。でもなんなんだろ。私なんか樹里ちゃんにしたのかなあ。

昨日の2人の雰囲気から察するに、あまりいい話をしていた感じてはなかったけれど。もしかして、歩夢くんが改めて樹里ちゃんを拒絶したのだろうか。

それなら樹里ちゃんの暗い顔は納得出来るけど、「ちゃんに酷いことを言っちゃう」という樹里ちゃんの言葉の意味がわからない。

歩夢くんと樹里ちゃんの恋愛のごたごたは、私の関知するところじゃないだろうし。

ーーと、私がハーフパイプのプラットホームから、歩夢くんが滑る姿を眺めながら、悩み苦しんでいると。

ー、どうしたの?」

そんな私の横に、練習を一段落させたらしい海祝くんがやってきた。

「え? 何が?」

「昨日、にーちゃんと帰ってきてから元気ないよね」

「え……」

みんなには察せられないよう、いつも通りに振舞っていたつもりなのに。海祝くんは本当に人をよく見ているなあ。

「んー……別に、大したことじゃないんだけど」

「そうかなー? 結構悩んでるように見えるけど」

「え、そ、そんなことないよ」

「ま、どうせ樹里とにーちゃん絡みのことなんでしょ?」

自信ありげに尋ねる海祝くん。まだ何も言っていないのにあっさりと的中され、私はこの15歳の少年にド肝を抜かされた。

「えっ! なんでわかったの!?」

「だってそれしかないじゃん」

「な、なんでっ!?」

「いいからいいから。で、何があったのさ?」

どうして「それしかないじゃん」なのかがとても気になったが、それよりも早く誰かに悩みをぶつけたかった。私はか細い声で、こう言った。

「樹里ちゃんに嫌われたくさい……」

すると海祝くんは大して驚きもせず、「ふーん」と言うと、

「じゃあにーちゃんが言ったんだね。樹里とはもう付き合えないとか、好きじゃないとか」

と、淡々と続けた。

歩夢くんと樹里ちゃんの雰囲気からして、そんなような話はしていたかもしれない。ーーだけど。

「そうかもしれないけど、それならなんで樹里ちゃんが私に冷たくなるの?」

「いや、だからにーちゃんが樹里を振る理由にが関係してるからじゃない?」

「私が? なんで?」

本当に分からなくて首を傾げながら尋ねると、海祝くんは私を何故かジト目で見てから、深く嘆息をした。

「ーー奇跡的な鈍さだなあ。にーちゃん以上かもな」

「え?」

「だーかーらー。 にーちゃんは、のことが!」

少しイライラしたよう様子の海祝くんだったが、そこまで言ったところではっとしたような面持ちになると、言葉を止めた。

「……さすがに勝手にこれを言うのは怒られるか。盗撮よりまずいよね」

そして1人でボヤくようにぶつぶつ言う。私は全く意味がわからない。


いただけると感激です→ web拍手 by FC2

前のお話   次のお話

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

名前変換

 

Your name