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3/7 コロラド州 ベイルリゾート ベイルビレッジ No.4

 

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「へー! それじゃあ本当はちゃんはフォトグラファーなんだね」

ーー外国人男性に絡まれている樹里ちゃんを、スコッティと救ったあと。

私は樹里ちゃんと2人でベイルビレッジ内を少しぶらつき、なんとなくおいしそうに見えたリストランテに入店した。

樹里ちゃんはベジタリアンが好みそうな野菜がごろっと入ったグラタンを注文していた。

さすが、美容にすごく気を使ってるんだろうなあ。私も見習わなければ。ーーって言っても、私が頼んだのはアメリカナイズなビーフステーキだけど。お好み焼きにもポテトチップス入れちゃうし……女子としてどうなの、ほんと。

「うん、今でも写真撮ってメディアに売ったりしてるんだー」

「へえ。もう手に職があってすごいね。それで、どうして歩夢のマネージャーになったの?」

「あー、話すと長くなるんだけど。最初は本当に偶然でね」

そして私は自分が歩夢くんに正式に雇われた経緯を、かいつまんで樹里ちゃんに説明した。

空港で通訳がいなくなって困ってた歩夢くんと、たまたま出会ったこと。

その時私は1文無しで、歩夢くんの「給料払うから、通訳してくれない?」という提案は願ってもないことだったということ。

当初はXゲームが終わるまで、という期間限定のつもりだったけれどーー。

「……歩夢くんが命懸けで滑ってる姿を間近で見てさ」

「うん」

「なんてかっこよくてきれいなんだろう、って思って。どうしても歩夢くんが滑ってる姿を写真に撮りたくなって。その事を言ったら、じゃあマネージャーやりながら写真撮れば?って歩夢くんが提案してくれてね」

「へえ……」

「というわけなの。ーー本当に、歩夢くんが空を飛ぶように滑ってる光景が、衝撃的で。人生観が変わった気がするよ〜」

私がそこまで言うと、樹里ちゃんは真剣な面持ちになり、私を凝視した。さっきまでにこやかだったので、私はたじろぐ。

あれ、なんかまずかったか? 考えてみれば私って、樹里ちゃんの好きな人の近くにいつもいる女だし……あまり聞きたくない話だったかなあ。

ーーしかし。

「分かる……!」

「え?」

「そうなのー! 歩夢は本当に衝撃的に絶対的にかっこいいのー! あんなにかっこいい人はこの世にいない! そう思えちゃうくらい最高なのー!」

「え、あ、はい」

突然瞳を輝かせ、身を乗り出して主張する樹里ちゃんに気圧される私。

「歩夢と初めて出会ったのは、小学生の時に同じクラスになった時だったんだけどね」

「う、うん」

「その時はまあ、小学生のくせにクールで、ちょっとかっこいい子だなあくらいで。で、放課後遊ばない?って誘ってみたの。ーーその頃私の誘いを断る男の子なんていなかったから、私すごく調子に乗ってて。わりと上から目線で歩夢に声掛けたんだ」

「ーーへえ」

まあ今これだけ可愛いんだから、幼少の頃も美少女に違いない。そりゃ大抵の男子は言うことを聞くだろう。

「当然歩夢も二つ返事で誘いに乗ってくると思ったの。ーーでもさ、なんて言ったと思う? 歩夢」

「うーん、なんだろう?」

「『 俺スケボーの練習あるから無理』って」

「…………」

あー……。あの、なんて言うか。

すごく……言いそうです。

「秒で断ってきたの! 迷いもせずに! わたしの誘いを断るなんて!?って思ったよねー、その時は 」

きっと今と同じようにあまり表情も変えずに淡々と言ったのだろう。容易に想像がつく。

小学生の頃の歩夢くんも、今と同じようにかっこかわいいかったんだろうなあ。

「でもそれが私の恋の始まりだったなあ」

「え……? 断られたのに?」

「断られたからだと思う。何よ!って最初は思ったけど、絶対こっち向かせてやる、って燃えちゃって。それで歩夢んちに突撃したり、歩夢の実家が経営しているスケートパークを覗いたり」

「すげえ……」

それってストーカーでは……? まあ歩夢くんがそう思ってないならいいのか。

「そうしてるうちにね、他の何にも目もくれずにスケボーとスノーボードの練習に真剣に取り組む歩夢が、本当にかっこよく見えちゃって……。もう歩夢以外見えなくなっちゃった」

樹里ちゃんは少し照れながら言った。真剣に競技に向き合う歩夢くんは、確かに本当にかっこいい。

大多数の男を手玉に取れる樹里ちゃんすら、ぞっこんになってしまうのだって理解出来る。

「歩夢くんはかっこいいよね。さっきも言ったけど、それは私も思うな〜」

「でしょ!? あー、こんなこと話せる人他にいないから、ちゃんと語れて楽しいわ〜」

満面の笑みを浮かべて、心底嬉しそうに樹里ちゃんは言う。そんな人類の半分を堕とせそうな笑みを私なんかに向けていいのか。なんとなくもったいない気がする。

「あ、でもさー。歩夢くん普段は少し抜けてるよね〜」

私も歩夢くんについて語るのが面白くなってきて、今頃コテージにいる歩夢くんをからかうような気持ちで言った。ーー普段からかわれまくりだから、ちょっと仕返し。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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