記事一覧

3/7 コロラド州 ベイルリゾート ベイルビレッジ No.1

 

Your name






side

明日にセミファイナルを控えた日の夕方。

私はコテージのすぐ近くの、ベイルビレッジというエリアで、みんなの日用品や食糧やらの買い足しを一人で行っていた。

歩夢くんや来夢くんが心配だからついていくと言っていたのだが、明日に試合を控えている人を連れ回すわけには行かない。

コテージから徒歩で10分ほどの距離だし、買い物をしたらすぐ戻るからと伝えて、渋る2人を横目に私は1人でコテージを出たのだ。

ーーだけど。

「…………重い」

調子に乗って、歩夢くんがよく飲んでる水を買いすぎてしまって。っていうか、他にも、これは歩夢くんが使いそうだなーとか欲しがりそうだなーとか、思ってしまったものをついつい買ってしまって。

というわけで、私は両手が痺れるくらいの荷物を1人で抱えていた。

まあそんなに遠い距離じゃないし、一人で少し頑張ればなんとかなる。……と、思いつつも、私は1回休憩することにし、ブランドショップや土産物屋が並ぶ通りに備え付けてあるベンチに腰を下ろした。

「あいたた……」

荷物を自分の横に下ろし、筋肉が張ってしまった肩を擦る。ここからコテージまであと5分くらいか。すこし休めばなんとかなる……かな。

と、私が今後を希望的に観測していると。

「Hey,! (おー! じゃないか!) 」

陽気なオーストラリア訛りの英語が少し離れた場所から聞こえてきた。声がした方を見ると、童顔で長身の美青年の姿。

「Scotty!」

オーストラリア代表で歩夢くんのライバルでもある、スコッティ・ジェームズが、私の方へ駆け寄ってきた。

そういえば、この人も今回出場するんだっけ。ショーンは欠場だから、スコッティが最大のライバルかなあ。

「What are you doing in such places?(こんなところで何してるの?)」

「Oh, I was shopping.(あ、ちょっと買い物を)」

「I see. You bought quite a lot.(そうなんだ。すごくたくさん買ったねー)」

「Yes it is.(うん、ついね)」

「It sounds hard for you to have. Shall I help?(持つの大変そう。手伝おうか?)」

「Huh……?(えっ……)」

一瞬お願いしようと思ったが、この人も明日大会に出る人だしなあ。少しの距離とはいえ、あまり気が進まない。

と、私が迷っていると。

「Well how about even with a delicious dinner with me?(まあその前においしいディナーでも一緒にどう?)」

スコッティは荷物をさりげなくどかし、私の横に座ると、爽やかな微笑みを浮かべて私の顔をのぞき込む。

「Wait a moment…….(えっ、いや……)」

この人会う度会う度そういうこと言うよなあ。たぶん女の子を口説くのが好きなんだろうけれど。

前に友基くんが「スコッティは本気でを狙ってる」なーんて言ってたけど、こんなセクシーな人が私みたいな色気ゼロの子供みたいな女をターゲットにするなんて、どうしても思えないし。

しかしスコッティとはよく顔を合わせるし、歩夢くんや来夢くんと仲良くしてるようだから、あんまり露骨に拒否もしにくいんだよなあ。

「Hey, hey, let's go. There is a delicious grilled steakhouse in the immediate vicinity.(ねーいーじゃん、行こうよー。すぐ近くにおいしいグリルステーキの店があるんだよ)」

「Delicious grilled steak……(おいしいグリルステーキ……)」

少し……いや、かなり心惹かれる私。

しかし、「すぐ帰る」と歩夢くんに言ってあったし、もしスコッティが本気なら気を持たせても悪いと思ったので、私ははっきり断ろうと心に決めた。ーーステーキは大会が終わって時間があったら、歩夢くんたちと行くことにしよう。

と、私が考えていた時だった。

「ーーん?」

私たちがいる場所から、数十メートル離れた先に見覚えのある姿が見えた。

辺りは少し暗くなってきたけれども、その美しいシルエット、黄昏時にも関わらずきらきらとした魅惑的な瞳……遠目でも、その稀有な麗しさで誰だか判別できる。

「樹里ちゃん……?」

「Huh? Do you know that girl?(え? あの子知り合い?)」

困ったような愛想笑いを浮かべながら、樹里ちゃんは立っていた。そして彼女の傍らには長身の2人の外国人男性が。

ーー状況的に、たぶん。

「She seems to be squatting, that girl.(口説かれてるみたいだね、あの子)」

そりゃ、樹里ちゃんほど綺麗な子なら、世界中どこにいたって男性が放っておくはずがない。

しかし樹里ちゃんはどうやらお断りしたいようで、少し慌てているような素振りが見えた。樹里ちゃんは歩夢くんにしか興味が無いので、さもありなん。

もしかして、うまく逃げられずに困っているのかも。英語がそんなにわからないのかもしれない。


いただけると感激です→ web拍手 by FC2

前のお話   次のお話

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

名前変換

 

Your name