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3/7 コロラド州 ベイルリゾート USオープン会場 No.2

 

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「ふぅ……」

ずーっとタブレットの画面とにらめっこをしていたら、目が乾いてきた。私はいったん画面から目を離し、まぶたの上に手首を乗せて小さく息をつく。

五輪で銀メダルを取ってからというもの、歩夢くんへの注目度はうなぎ登りで、取材の依頼の連絡はひっきりなしにやってくる。

私はそれらを1人で整理中だった。みんなが練習しているパイプの近くに建つ、インフォメーションセンターの建物内の休憩スペースにて。

ーーちょっと疲れた。飲み物でも飲んで休憩しようかな。

私は休憩スペースのソファから立ち上がり、近くに設置してある自動販売機へと向かった。

ーーすると。

「あ、

ちょうど水を購入し終えた歩夢くんの姿が、そこにあった。

「ーー歩夢くん。休憩中?」

「うん。ちょい喉乾いた」

そう言って水のボトルの蓋を開け、水を飲みだす歩夢くん。ボトルの飲み口に付けた彼の唇が目に入り、昨日のキスを思い出す。

いやに鮮明に思い起こされ、体が少し熱くなったが、表に出さないように踏ん張る。ーー歩夢くんの意味のわからないスキンシップにも、少し慣れてきたのかも。

の仕事は大丈夫そう?」

「うん、まあなんとか……」

「いつもありがと」

「いえいえ。歩夢くんはそれ飲んだらまた練習?」

まだ時刻は午後2時で、空が暗くなるまでには数時間ある。練習を切り上げるには早い気がするが、明日はセミファイナルなので無理をせずに終わらせるかもしれない。

「ん、もうちょいやってくよ。あと少しだけ」

「そっか、頑張ってね」

私がそう言うと、歩夢くんは何も言わずにじーっと私を見てきた。

キスを迫るような時の色っぽい瞳とは違う、真剣味のある視線。

「ん、何?」

すると、歩夢くんは少しだけ黙ってから口を開いた。

、さっきの取材のときの俺が答えた内容聞いてた?」

「え……あー、今度の取材の打合せして聞いてなかった」

「ーーそっか」

何か含みを持たせたような言い方だった。聞いてないとまずい内容だったのだろうか。

「ごめん、どんな話してたの?」

「あ、いや。別に聞いてなかったんならいいや」

「えー! 言ってよー。そこまで言われたら、気になるじゃん」

引き下がる歩夢くんに、口を尖らせて食い下がる私。歩夢くんはぽりぽり頬をかいてから、こう言った。

「去年怪我したコースだから大丈夫か?みたいなこと聞かれて」

「ーーうん」

「まあ、またなりそうだなって気持ちはあるって言った。ーーまだ怖いって感じで」

言い終わると、歩夢くんはまた水を1口。今回の大会ならではの取材内容だ。まあ、当然されるだろうなとは私も思っていた質問。

「やっぱり聞かれるよね、そのこと」

「うん」

「でもさ、そんなの決まってるのにね、答える内容なんか」

「ーーえ?」

どの飲み物にしようかな。私は自動販売機を眺めながらこう続ける。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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