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3/5 コロラド州 ベイルリゾート USオープン会場 No.3

 

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「ごめん……」

「え?」

「樹里ちゃんのことは応援したいけど……歩夢くんの気持ち、私わからないから。勝手なことは言えない。私は歩夢くんのメンタルも支えなきゃいけないから」

私がゆっくりと噛み砕くように言うと、樹里ちゃんは驚いたように目を見開き、しばしの間私を見ていた。彼女はしばらくの間、何も声を発さなかった。

ーーげ。まずかったか……? 応援出来ない、って酷かったかな……? いや、でも……。

樹里ちゃんの様子に私か慌て出した……その時。

「……ぷ。あはははは!」

いきなり樹里ちゃんが笑い出したので、今度は私が目を見開いて彼女を見返すことになってしまった。

「あはは! こ、こういう時は嘘でも「応援するよ」って言う場面じゃないの〜!? ちゃん面白いわー!」

「え、そ、そう?」

「そうだよ〜! もうおかしくて……あはははは!」

しばらく少し苦しそうになるくらいにまで、涙を浮かべて笑う樹里ちゃん。そんなに変な事言ったかなあ、私……。

すると一通り気が済んだらしい樹里ちゃんが、私に向かってこう言った。

「あー、面白かった。なんだか私ちゃんのこと好きになっちゃった。正直だね」

「え、あ、ありがとう」

面と向かって、しかもこんな美少女に好きになっちゃったなーんて言われて、私は照れてしまった。そしてすごく嬉しかった。

「ね、友達になってくれる?」

ちょっと首を傾げて微笑む樹里ちゃんは、相変わらず絶世の美少女だったけれど、近寄り難い高嶺の花、という印象はなかった。

その微笑みは、とても親しみやすくて、野花に咲く花のような、柔らかい可愛らしさを湛えていた。

「うん、喜んで」

満面の笑みを浮かべて私がそう言うと、樹里ちゃんも微笑みを深くして返してくれた。

すると樹里ちゃんは手袋をしている手を寒そうにさすり始めた。

「はー、それにしても寒いね、ここ。みんな平気なのかなあ」

「歩夢くんたちは慣れてるよねー。私も結構慣れたよー」

「そうなの? すごいね、ちゃん」

「あ、寒いならあっちのインフォメーションセンターに、温かい飲み物がある自動販売機があったよ」

私は少し離れたところにある、ロッジのような建物を指さしながら言った。あそこは大会を案内してくれる係員がいたり、ちょっとした休憩ができたりする建物だ。

「そうなの? ちょっと買ってこようかな。ちゃんも飲み物いる?」

「あ、私は大丈夫だよ。ありがとう」

「そう? じゃあ行ってくるね」

そう言うと、樹里ちゃんは踵を返してセンターへと向かった。

そしてその直後に、歩夢くんと英樹さんが私の元へとやってきた。

「あ。お疲れ、歩夢くん」

「……今樹里と話してなかった?」

ゴーグルを額に上げた歩夢くんが、神妙な顔で聞いてきた。

よく考えてみれば、自分が振った元カノとマネージャーの私が仲良くなるって複雑だよなあ。

でも変に誤魔化す必要も無い気がしたので、私は正直にこう言った。

「うん、話してたら仲良くなったよ」

「ふーん、そうなんだ。よかったね」

歩夢くんは拍子抜けするくらいさらりと言った。

樹里ちゃんは歩夢くんに対して深い感情があるようだけれど、歩夢くんはもう昔のことだと割り切っているのだろうか。

ドライな男だなあ、歩夢。

「あ、ちゃん」

「何? 英樹さん」

「肩に変な虫ついてるよ」

「え!?」

英樹さんの言葉にぞくりと身を震わせる。変な虫……!? どんな虫よ!? 私の肩に!?

「ーーあ。ほんとだ」

何故かニヤニヤする歩夢くん。しかし2人に虫が肩に存在してる事実を告げられ、私は泣きそうになる。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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