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3/5 コロラド州 ベイルリゾート USオープン会場 No.2

 

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「い、いいよ」

しかし拒否するのも器が小さい気がして、私は恐る恐る承諾する。

すると樹里ちゃんは、深く息を吸い込んで吐き、私をじっと見た。先程までに浮かべていた、全てを魅了するような表情がーー。

なんと、みるみるうちに、泣きそうな顔になっていく。

えっ、と私が虚を突かれていると。

ちゃん。ど、どうしよう私……。歩夢に絶対ウザがられてるーー!」

「え、え?」

情けない顔すら可愛かったけれど、パーフェクトな美少女からは程遠いような、いきなり感情を露わにした樹里ちゃんに、私はうろたえる。

「聞いてるよね!? 私が歩夢の元カノって!」

「う、うん、まあ……」

「どうしても好きで好きで……振られたのに追いかけてきちゃったのー! 歩夢やっぱり冷たかった! こんなのうざいに決まってるー! でも好きなんだもーん! どうしたらいいの!?」

涙を流しはしなかったけれど、今にも号泣しそうな勢いで、樹里ちゃんが捲し立てるように言う。

ーーえ、なんだこの子。ーーなんていうか、すごく。

かわいくて面白いじゃないか。

「ねえねえ! 嫌われちゃったかな!? 歩夢私のことなんか言ってた!?」

「いやー、特にそういうことは何も」

「ほんとに!? ほんと!?」

「う、うん。応援しに来たって聞いただけだけど」

「ほんとなのね!? よかった……」

心からほっとして力が抜けたのか、頭を垂れる樹里ちゃん。

必死なところ申し訳ないけれど、なんだかその様子がすごく人間味があってかわいくて、私は自然に頬が緩んでしまった。

「歩夢くんは、自分を応援してくれる子を嫌ったりしないと思うよ。ーー恋愛のことは分からないけど」

すると樹里ちゃんが顔を上げた。樹里ちゃんは目を見開いて私を見たあと、口元を微笑ませた。

「マネージャーさんはよくわかってるね、歩夢のこと。ーーそうだね。ああ見えて歩夢は誰にも優しいんだよね」

「うん」

「でも、やりづらい時あるでしょう? 歩夢クールだし、女の子といるよりスノーボードに夢中だから。大丈夫?」

「やりづらい……?」

樹里ちゃんの言葉に、私に対する歩夢くんの行動を思い起こす。

確かにあまり親しくない人にはクールだけど、私に対しては暇さえあればからかってくるし、急に近寄ってくるし、抱きついてきたり、キス……してきたりするし。あまりクールな感じはないな。

まあ、ハグやキスを迫られた時どうしたらいいかわかんないし……。そういう意味では、やりづらいかな?

「ま、まあ。そういう時もあるね」

「そうだよねー。悪いけどよろしくね、歩夢のこと」

「うん」

「はあ……歩夢、私のことまた好きになってくれるかなあ……」

樹里ちゃんがパイプを遠い目をして見ながら言った。彼女の眺める先には、滑り終えた位置で英樹さんと何やら談笑している歩夢くんの姿があった。

「歩夢は本当にどんな時も、どんな瞬間もかっこよくて……。だから私も完璧でいよう、完璧な彼女でいよう、って頑張って……。いつもかわいくいよう、歩夢にとって恥ずかしくないような人になろうって……思ってたんだ」

「ーーそうなんだ」

ーーだから、私の前で急に印象が変わったのか。女同士の話とは、素の自分を見せるという意味だったらしい。

だけど、私はこんな風に泣きそうになったり、弱音を吐いたりする樹里ちゃんの方が可愛く見える。ーー歩夢くんもそうなんじゃないだろうか。

「ねえ、ちゃん」

「ん?」

「私のこと、応援してくれる?」

樹里ちゃんがその吸い込まれそうに美麗な漆黒の双眸を私に向けて、おずおずと言った。

こんな超絶綺麗な子に懇願されて、NOと言える男は恐らく皆無なのではないだろうか。女の私ですら、速攻で首を縦に振りそうだった。

ーーしかし。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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