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3/4 コロラド州 ベイルリゾート コテージ No.3

 

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「ちょっとしたすれ違いがあったとしても……あんな可愛い子と別れる男なんているのかな?」

すぐに誰かが答えるかと思ったのに、しばしの間誰も何も言わなかったので、私は洗い終えた包丁を布巾で拭きながら、友基くんと海祝くんの顔をちらちらと見た。

2人とも、ちょっと驚いたような顔をして私を見ていた。

「え、何?」

予想外の2人の反応に、私は素でそう尋ねる。すると2人ともはっとしたような顔をした。

「あ、ごめん。……そうだね。まあ確かに」

「言われてみればねえ」

煮え切らない態度の2人。どういうことなのだろう。

「え! 何その微妙な反応! 超美少女じゃん!?」

「いや、だってさー……」

「だって?」

「樹里は歩夢命だからさあ」

「兄ちゃん以外興味無いからね。あそこまであからさまだと、にーちゃんの周りにいる男からしたら、もうかわいいとかかわいくないとか、そういう対象じゃないんだよね」

「ふーん……?」

そういうもんなのか。男の子の気持ちはよく分からないけれど。そういえば來夢くんと英樹さんも樹里ちゃんが来たことを知ったとき、驚きはしたが、浮き足立ってきる様子はなかった。

でも、ということはやっぱり、樹里ちゃんは歩夢くんに全身全霊で恋をしているということだ。別れてしまった今でも。

「でもまさか、追いかけてくるなんてね。こんなとこまで」

「歩夢が冷めて一方的に別れて、諦められない樹里が追いかけてる状況? 海祝はその辺も知らないの?」

「さあ、俺もよく知らないよ。にーちゃんあんまりそういうこと教えてくんないし」

歩夢くんが冷めた……? 本当にそうなのだろうか。

好きだったのに別れないといけない状況だったのかもしれない。それにもし仮に歩夢くんに「冷めた」という過去があったとしても。

今、熱烈に抱きついてくるあんな美少女がいたら、恋心を再燃させてしまうのではないだろうか。

「ねー、

すると海祝くんが、また私をじっと凝視してきた。その表情は真剣で、年齢の割に達観しているなあと思い知らされる。ーーやっぱり、歩夢くんによく似ている。

「んー?」

私はそんな海祝くんから目を逸らし、お好み焼きの具材を整理しながら、上の空ぶる。

「もしさあ」

「うん」

「にーちゃんと樹里が……より戻したらどうする?」

心臓が大きく震える。その拍子に体までびくっとしてしまいそうになるが、私は唾を飲み込み、必死に平静さを装う。

「どうしよう、ねえ」

のんびりと適当な調子で言う。海祝くんの方は見ない。ーー見抜かれそうで。

「お祝いでも、しよっか」

おざなりに言った私の言葉に、海祝くんは何も答えなかった。彼の顔は見ていないから、どんな表情をしているかは知らない。

ーー何を焦っている。何をうろたえている。

あの人が私に構うのは、たまたま近くにいるからなだけ。手頃な通訳が偶然見つかったから、雇っただけ。

好きになんてなってない。恋なんてしていない。だってあの人は、自分に絶対的な好意を寄せる絶世の美少女からすら、あっさりと離れてしまうような人。

そんな人が、私なんかを相手にするわけなんて、ない。

だから好きになんてなってない。これからも絶対にならない。

私はただの通訳兼マネージャー。

それ以上でも、それ以下でもーーない。







ちなみに海祝くんの「にーちゃん」呼びですが、「あーくん」と迷ったのですが、今後書くかもしれない話のために「にーちゃん」にさせていただいています(笑)。 
ご指摘いただいた数名の方、ちょっとした動画で一瞬言っているだけなのに、さすがの歩夢くんファンですね! 
これからも何か気になることがあれば是非おっしゃってください! ありがとうございます💕

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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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