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3/4 コロラド州 ベイルリゾート コテージ No.2

 

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「樹里は歩夢の元カノ」

「……元カノ」

まな板の上の豚肉を切る私の横に立つ友基くんの言葉を、神妙に聞く私。彼は、ボールに入れたお好み焼き粉と卵と水を泡立て器で混ぜていた。すぐ近くでは、海祝くんがチーズの袋を開けている。

英樹さんと來夢くんは、キッチンの床下収納にしまわれていたホットプレートを引っ張り出したり、カップボードの中を見て使えそうな食器を選んでくれたりしていた。今はリビングの方で準備をしてくれている。

ーーそして、歩夢くんはというと。

「何話してるんだろうね、外で」

「ーーさあねえ」

友基くんの言葉に、私は苦笑を浮かべてどうでもよさそうなふりをして答える。

私たちがスーパーでお好み焼きの材料を買ってコテージに戻り、例の美少女ーー樹里ちゃんが歩夢くんに抱きついたあと。

歩夢くんは、「ちょっと樹里と話してくるから、先にお好み焼き焼いてて」と私たちに告げ、コテージの外に樹里ちゃんといる。

「ーーちょうどね」

「ん?」

すると海祝くんが、私をじっと見ながら、真剣な顔をしてきた。歩夢くんにどこか似ているその顔に見つめられ、私は自分の焦りを見抜かれてるんじゃないかと思ったけれど、気を張って軽そうな笑みを浮かべる。

「去年の今頃別れたんだよね、あの二人」

「ふーん、そうなんだー」

軽い相槌を打ったつもりだが、ちゃんとできているだろうか。

「どうして別れちゃったんだろうね?」

そこまで振られて何も聞かないのも返って変な気がして、私は今日の天気は晴れだっけ?と尋ねるような口調で問う。

「俺は詳細は知らないなあ。海祝の方が知ってるんじゃない?」

「俺もにーちゃんにちゃんと聞いたわけじゃないよ。まあだいたい想像はつくけどさ。友基さんもなんとなく分かるでしょ?」

「ーーまあ、ね」

顔を見合わせる2人。ーーこの2人のこの言い方で、ここで質問しなかったらおかしいよな。

「どういうこと?」

「……うーん。樹里はね、いい子なんだけど。女の子なんだよね、すごく」

「…………?」

友基くんの言っている意味が分からず、私は訝しげな顔をする。

「にーちゃんはスノーボードが1番でしょ。でも、普通の女の子は普通に彼氏とたくさんデートしたいでしょ。……そういうところだと思う、別れた原因」

「……はぁ、なるほど」

確かに、スノーボードに命をかけている歩夢くんは、恋人にたくさんの時間は割けないだろう。20歳前後の女の子なら、それは不満に思えても仕方ないのかもしれない。

でも、それだけなのだろうか。

樹里ちゃんの歩夢くんを見る瞳に込められた想いは、そんな些細なことで折れてしまうような恋心には思えなかった。

ーーそれに、第一。

「でもさー、めちゃくちゃかわいいじゃん、樹里ちゃん」

肉を切り終わった私は、包丁をスポンジで洗いながらさり気なく言う。彼女の稀有な美しさについて、何も触れないのもおかしな気がして。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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