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3/4 コロラド州 ベイルリゾート コテージ No.1

 

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「あー、やっと着いたー。重かったー」

買い物を追えてコテージに辿り着くと、すでに日が暮れていた。私もお腹がすいてきたけれど、待っているみんなもお好み焼きを心待ちにしていることだろう。

「重かったの? だから俺が全部持つって言ったのに」

コテージの扉に続く階段を、私より1歩先に登りながら、すでに両手いっぱいにレジ袋を下げている歩夢くんが言う。私は首をぶんぶん横に振る。

「いやいや、歩夢くんの方が重そうじゃん」

「いや重くないし。の分も持っても平気だよ全然」

「おー、さすがアスリートですね〜」

「まあね」

しかし私は笑ってこう言った。

「いやでもね、さすがに全部持たせるのは……なんとなく、悪いでしょ」

「ふーん、そうかな」

「そうです」

「……もっと甘えてもいいのに」

歩夢くんが、ぼやくように言う。……あー、やっぱりこういうのは「重ーい!持てなーい」とか言う子のほうがかわいいんだろうなあ。

私は1人でなんでもやろうとしてしまうので、人に甘えるのが苦手なのだ。

ーーさっきスーパーで会ったあの子ならうまく甘えられそうだ。いや、あの子なら何も言わずとも荷物を持ちたがる男が殺到するだろうなあ。

私がそんなことを考えていると。

私たちが宿泊するコテージの隣の、小さめのコテージ(恐らく1人か2人用だろう)から、扉が開く音がした。何気なく、私は音のした方に目を向ける。

ーーすると、そこには。

「ーーあれ」

まさに例の絶世の美少女が、隣のコテージから出てきたところだった。あの子、隣に泊まってるんだ。

彼女は私の方を見ると、心底驚いたような顔をした。さっきスーパーで出会ったからだろうか。しかしそれにしては、リアクションがオーバーなような。

すると、彼女は勢いよく走り出し、こちらに向かってきた。もちろん走り方もおしとやかでかわいらしいのだが、その必死な走り方に私は虚を突かれる。

? どうしたーー」

美少女の存在に気づいていなかったらしい歩夢くんが振り返り、コテージの扉へ続く階段の上で立ち止まっている私に言った。

ーーすると。

「歩夢!」

例の美少女が私の横を通り過ぎ、歩夢くんへと一直線に向かう。歩夢くんは彼女の顔を見るなり、驚愕の面持ちになった。

ーーそして。

「歩夢……会いたかった」

美少女は歩夢くんに飛びつくように抱きつき、彼の胸に顔を埋める。歩夢くんは吃驚した表情のまま、眼前にある彼女の頭を見て、掠れた声でこう言った。

「樹里……?」

歩夢くんの手から、物が入ったレジ袋が滑り、階段の上にどさっと落ちる。

ーーどくん、と心臓が嫌な風に鼓動を打った気がした。

歩夢くんが女の子に抱きつかれている。それも史上最高クラスに麗しい子に。

なんだろう、この嫌な感じ。私は何をこんなに……絶望しているのだろう。

だけど私はどうすることもできずに、ただただ見目美しい少女に抱擁される歩夢くんを、無言で眺めることしか出来なかった。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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