記事一覧

1/21,コロラド州 アスペン Xゲーム会場 no.3

 

Your name






歩夢side

 ――近くで歩夢くんを見たい。

  が滑る前にそんなことを言うもんだから。まっすぐに瞳を重ねてくるもんだから。

 柄にもなく少しどきまぎしてしまった。

 しかし、ドロップインしてから俺の精神はボードに集中した。長年滑り、培った俺の技だ。

 RUNの間は雑念を入れない。そもそも入る余地がない。

 ここのパイプは久しぶりだったし、何日かぶりのボードだったかは、難易度の高い技はせずに軽く調子を確認しただけだったけれど。

 ドロップアウトして と来夢の傍らまで戻ると、 は呆然と俺を見ていた。――どうしたんだろ。

 するとしばらく俺をぽかーんと見たあと、 ははっとし、俺の方に詰め寄ってきた。

「歩夢くん!!」

「え、何」

 距離が近い。俺のパーカーを着ていることを改めて認識し、また俺は少し変な気分になる。

「すごいすごいすごい! あんな風にどうして飛べるの!? 回れるの!? もうすごすぎる! かっこいい!」

 正直そうな のことだから、心からそう思って言っているのだろう。

 すごすぎる、かっこいい。 は俺に対して本心でそう思ってくれている。

 ――あれ。

 言われ慣れていることなのに、何故か嬉しさがこみ上げてくる。

「それに銀メダル!? 世界ランキング一位!? 次もオリンピック!? 知らなかったよー!」

「いや、知らなすぎでしょ…4年前あんなに騒がれてたのに。名前くらいはしってるでしょ普通」

「う……あんまり日本にいなくて、スポーツ事情知らなくて……」

 来夢が苦笑を浮かべ、 が申し訳なさそうにする。あ、来夢が教えたのか。……まあ、いずれわかることだからいいけど。

 もしこれで の態度が今までとどこか違っても、それはそれで仕方ないが、なんとなく は今までと変わらなく接してくれそうな気がした。

 だって俺と同じで、世界を飛び回っているから。俺よりすごいやつなんてきっと何人も見てきているはずだ。

 こんなんで態度を変えるような、小さい器ではないだろう。

「まあ、そうです。銀メダリストの平野歩夢です」

 俺はなんだかおかしくなってふざけて言った。 もおどけて「おおー」と拍手をする。

 しかししばらくすると、何かに気づいたようにはっとし、顔を青ざめさせた。


励みになります→ web拍手 by FC2

前のお話   次のお話へ

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

名前変換

 

Your name