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酔いどれ No.7

 

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ーーもう無理だ。酔ってるとはいえ、にあんな顔をされてキスをせがまれては。もうあとの事なんて知らない。

俺はずっと、ずっと、こうしたかったのだから。

ーーしかし。

眼前のから、規則正しい寝息が聞こえたきた。見ると、瞳を閉じているは、先刻と同じような心地の良さそうに眠っている。

「……ってマジか」

寝るのかよ。このタイミングで。

あまりにも理解が追いつかない状況で、俺はの手首を掴んだまま、しばしの間固まる。

そして俺は小さく嘆息をして、のその細い手首を解放し、体を起こした。

「……そういう奴だよな、は」

俺は眠る大好きな人に向かって呆れたように言った。もう少しだったのにという惜しさや、なんだよ期待させといてという苛立ちはもちろんあったけれど。

それ以上に、安堵の気持ちの方が大きかった。がこのタイミングで寝落ちしたことで、ことに及ばずに済んだことが。

ーーやっぱり君とはもう少し、曖昧な関係でいよう。

だって本当にありえない。君はいつも俺の想定外で、ありえないくらいに面白くて。

もう少し自由な君を横から見ているのも、悪くない気がする。俺はすやすやと眠るの寝顔を眺めて、1人で小さく笑う。

「ーーおやすみ、

そして俺は静かにそう言うと、彼女の部屋をあとにした。





朝起きて部屋で身支度をしていると、インターホンがなった。ドアの覗き穴から外を覗くと、が立っていたのでドアを開ける。

「ーーあの、えっと」

は恥ずかしそうに視線をやや下方に向けながら、何かを言いたそうに口ごもる。

「おはよ、

その様子がちょっと面白かったけれど、とりあえず俺は部屋に入れた。

昨日の事など何も無かったかのように俺が部屋の奥に入っていくと、はもじもじした様子で後に続いてきた。

「あのさー、歩夢くん。昨日……」

「昨日?」

「私、結弦くんと歩夢くんと焼肉屋言った途中から記憶ないんだけど……何かあったのかな」

恐る恐る尋ねる。半ば予測はしていたけれど、全く覚えてないようだ。

俺に行かないでと抱きついたことも、キスをねだったことも。

「あー。昨日間違ってお酒飲んじゃってさ」

「え!? あー……やっぱりそうなんだ。記憶無いからそうかなとは思ってたんだけど」

「前もこんなことあったの?」

「うん、家族の前で1度だけ。そしたらあんたはもう飲まない方がいいって言われたから、飲まないようにしてたんだ」

ーーなるほど。

過去に家族の前に1度だけ、か。

それならきっと、のあの姿を見た男は、きっと俺だけ。すらも知らないを知っているのは、俺だけ。

優越感に浸り、思わず笑みがこぼれそうになる。

「私変なことしてなかった? 迷惑かけたよね……」

心配そうに尋ねる。俺は少し考えてから、意味深に笑う。

「迷惑かけられてなんかないよ。むしろすげー面白かった」

「え!? 面白かったって!?」

「いや、別に大したことじゃないよ」

「……そう?」

詳細は言わない。言ったらどんな反応するかなあとも思ったけど、が昨日の自分を知ったら酒に関する警戒心が増してしまうだろう。

それだけは避けたかった。ーーだって。

「まあ、あんまり人前では飲まない方がいいかもね」

「だよねー……」

「人前では、ね。ーーけど」

「ん?」

「俺と2人だけの時は、飲んでもいいよ。どんどん」

俺はに対しては自分から攻めていきたい。だってその方がが面白い反応をするから。が俺の言葉で、行動で恥ずかしがったり、焦ったりするところを見るのがたまらなく好きだ。ーー我ながら悪趣味だなあとは思うけど。

でも時々は、寄ったに抱きつかれたり、キスをせがまれたりするのもーー悪くない。むしろお願いしたい。

「え、なんで?」

不思議そうに首を傾げる

「ーーさあね」

しかし俺は不敵に笑ってそれだけ言った。

昨日の姿は、君の奥底に眠る本性なのだろうか。

ーー行かないで、よ。

ーーじゃあキスしよっか

ーー私のこと、嫌いなの?

そうだとしたら、君は俺のことをーー?

確かめるためには、もう一度君に飲ませるしかない。しかしなかなか自分からは飲んではくれないだろう。

次に暴かれた君を拝めるのは、一体いつになることやら。







酒に弱いヒロインが酔って甘えるというベッタベタな展開ですが、どうしても書きたかったので書きました笑
っていうか、私が書く歩夢くん押し倒してばっかりですね……。しかも押し倒して終わりっていう。
ちょっとかわいそうになってきました。でもまだしばらくはこのままだけど。

羽生くんは歩夢くんのこと結構好きです(変な意味じゃないよ)

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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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