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酔いどれ No.6

 

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もしかしたらにとっても、無意識の中に抱えている寂しさなのかもしれない。しかし、アルコールを摂取したことによって、それが暴かれてしまったのだろう。

そして、今しがた目が覚めたら暗い部屋で一人きりで。酔って混乱していることもあり、また自分が孤独な環境に置かれたと思ってしまったのだろう。

だから俺の姿を必死で探したのだ。

「大丈夫。俺はどこにも行かないから」

行くもんか。そっちがこの先嫌がったって、絶対に。

「ーーうん」

が俺の顔を見つめ、ピンクに染まった顔で微笑む。ーーもう、こんな至近距離でそんなふうに笑うなよ。

俺の理性はわりともう限界に近いのだから。

ーーすると

「じゃあキスしよっか」

が口角を上げ、少し濡れた瞳で俺を凝視しながら、甘えた声で言った。ーーやけに妖艶で、初めて見るの姿。

「ーーは……!? なんで……!?」

意味がわからない。俺は初めて、こう言った事柄で彼女に主導権を握られる。

「何だよー、いつもは迫ってくるくせに」

俺の反応には可愛らしく口を尖らせる。そして俺の鼻先数センチの距離まで顔を近づけてきた。

「いや、だって……」

側から来れられることに慣れてない俺は、どうしたらいいか分からずうろたえてしまう。

「いいでしょ別に! 私の言うことが聞けないってのか!」

「ーーいや、その」

俺のあやふやな態度にがイライラした様子で怒鳴る。ーー完全に悪酔いしている。は酔うとキス魔になるんだろうか。

「歩夢くんは私のこと……嫌いなの?」

声を張り上げたかと思ったら、今度は泣きそうな声音でが言う。忙しい人だ。

ーー嫌い? そんなわけない。むしろーー。

「ーー大好きです」

「だったらいいでしょ! キスくらい! このあゆむめ!」

ーーキスくらい、って。それいつも俺が君に言ってる奴じゃん。

しかしそれでもまごまごしている俺に、は瞳に大粒の涙をため、こう言った。

「こんなに言ってるのに……いじわる」

ーー理性を閉じ込めていた殻にぴしっとひびが入り、呆気なく割れる。

もう知らね。

俺はの顎を掴みちょっと強引に上を向かせた。

「こんなところでそんなこと言って、意味わかってんの?」

突然凄みを効かせて低い声で俺は言うと、酔いどれはきょとんとした顔をして、瞬きして俺を見た。

やはり何もわかっていない。酔っているから何も考えていないのかもしれないが。

だけどそんなことはもう知らない。誘ったのはそっちなのだから。

常に君を物にしたくてたまらなくて。君の一挙一動が気になって、捕まえておきたくて。ーーだけど我慢して我慢して。

そんな俺を誘惑したんだから、そっちが悪いんだからな。

「ーーえ。ちょっと……痛い、よ」

俺はの片手首を掴み、ちょっと強引に引っ張っる。そして半開きになっていたの部屋のドアを足で乱暴に開け、を中に無理やり引き入れた。

「な……に……?」

脆弱な声を上げる。ベッドの方へ引っ張りながら見ると、突然豹変した俺を涙目で怯えたように見ていた。

ーーいいね、その顔。最高だ。

俺はそんなを容赦なく押し倒す。

「……あゆむくん」

は掠れた声をあげる。少し震えているようだったが、抵抗するような素振りはなかった。

「望み通りキスしてやるよ」

「…………」

有無を言わせないような強い視線をぶつけて、低い声で俺が言うと、は目を逸らし、両手の平で顔を覆った。急に恥ずかしくなったようだった。

「ーー隠すなよ」

俺はの両手首を掴んで、半ば強引にの顔をさらけ出させる。そしてまるで拘束するように、両手首を彼女の顔の横に押さえつける。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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