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酔いどれ No.4

 

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歩夢side

「この部屋だけど」

「ふーん。平野くんは別の部屋だよね?」

「残念ながらそうだね」

「そりゃよかったよ。ーーで、鍵は?」

が持ってると思うけど」

ホテルのの部屋の前で、そんな会話を繰り広げる俺と羽生くん。ちなみにいまだに泥酔しているは、羽生くんがおぶっている。

もちろん俺がその役目をやりたかったのだけど、羽生くんが是が非でもやる、絶対譲らない、という態度で迫ってきたので仕方ないので譲ってやった。ーーまあ俺はと一緒にいる時間が長いし、それくらいなら。本当は嫌だけど。

ーーが某焼肉店で突然酔いつぶれたあの後。

何をやっても起きないので、俺たちは仕方なくを連れて店を出ることにした。幸い、俺とが宿泊しているホテルは店から徒歩数分のところにあったので、酔いつぶれたと一緒でもそんなに苦労はしなかった。

ちなみに店側に注文が間違っていたせいでが泥酔してしまったことを告げると、土下座でもしそうな勢いで丁重に謝罪された。

まあかなり困った状況にはなってしまったが、もうこうなってしまったことは仕方ない。羽生くんは王子の笑みを浮かべて「いいですよ、全然」なんて言っていた。まあ、彼は有名人だし競技のスタイル上イメージが大事なんだろうな。

そして今日の代金をかなり割り引いてくれた上、商品券やら次回の割引券やらを大量にくれたのは少しラッキーだった気がする。ーー今度と来る時に使わさせてもらおう。もちろん二人で行くけど。

、鍵どこ?」

俺は羽生くんの背中でやたらと気持ちよさそうに眠るに尋ねるが、予想通り無反応。

「バッグかポケットの中じゃないの?」

「……漁るしかないか」

羽生くんの言葉に、俺は抱えていたのリュックの中を探る。フォトグラファーのは常に両手が使えるようにリュック派だ。

しかし見当たらない。ーーってことは。

「ポケットか……」

の身体を触ることになるので、なんとなく後ろめたいのだが、これは仕方ないよな、うん。

羽生くんがおぶっているのジーンズのポケットに、俺は手を突っ込む。の体温が伝わって少し温かくーーそしてジーンズ越しでも柔らかい太もも。

「ちょっと平野くん、変なとこ触らないでよ」

「ーー違うから。探してるだけだし」

いちいち鋭いやつだなもう。

「あ。あった」

前側のポケットからは見つからず、後ろ側にカードキーが突っ込まれていた。もっとちゃんとしまえよ。まったくは不用心なんだから。

ーーのお尻を触ってしまった。ちょっとだけだけど。ジーンズ越しだけど。……柔らかい。

羽生くんにおんぶを譲ってよかった。

そして俺が鍵を開け、中に入った羽生くんは、ベットの上に慎重にを寝かせた。

「ーーんー……」

ときどき不明瞭な可愛らしい声を上げるだったが、ここに来ても起きる気配は全くない。

「ーーしかしよく寝るねこの人」

ひと仕事終えた羽生くんが呆れたように言う。

「このまま朝まで起きなそうだね」

「ーーあーあ。せっかくと会えたのに。もっと話したかったな」

心底残念そうな羽生くん。さすがに少し哀れになったけれど、まあ別にいいや。

「はい、じゃあ出るよ平野くん。ほら早く」

「ーーえ、ちょっと」

俺の背後に回り、急かすように背中を押して、の部屋から俺と共に退出する羽生くん。

「何、いきなり」

部屋の扉がちゃんとロックされたかどうかをノブを回して確認する羽生くんに、俺は不機嫌な顔をして尋ねた。

「いや、だって平野くんがの部屋に入れないようにしとかないとさ。の寝込みを襲うかもしれないでしょ」

俺に恨みがましい目を向ける。

「いや、そんなことしないから」

ーーたぶん、と心の中でこっそり付け加える。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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