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酔いどれ No.3

 

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険悪な雰囲気が流れる。この人、アスリートとしては尊敬出来るし、人間としてもかなりできた人だと思うんだが……。のこととなると豹変するので、俺もそれに対抗してしまいなんだか意地の張り合いみたいになってしまう。

ーー俺達がそんな会話を繰り広げていると。

「えっ……? 2人って仲悪いの?」

いつの間に戻ってきたのか。が俺の傍らに立っていた。俺たちの間に流れる不穏な空気を感じ取ったらしく、顔をしかめている。

「えっ、ち、違うよ!?」

珍しく羽生くんが焦った様子で言った。の前で負の一面を見せたくないのだろう。

かくいう俺も、がお兄ちゃんと慕っている羽生くんと、犬猿の仲と知られたらちょっとまずい。

「そうだよ。の気のせい」

「うんうん、俺と平野くんはなんでも言い合える仲というか」

「そうそう。ソチの頃からの付き合いだしね」

一致団結して華麗な連携プレーを見せる俺たち。するとは小さく安堵のため息をつくと、席に着いた。そのタイミングで、先ほどが頼んだオレンジジュースを店員がテーブルに置く。

「そう? ならいいけどさ」

そう言って置かれたばかりのオレンジジュースを飲み始める。喉が渇いていたのか、一気にグラスの半分ほど飲んでしまった。「ちょっと苦いなこのジュース」と首をかしげながら呟く。

「今日は3人で仲良く食べようよ」

キラっという効果音でもつきそうなスマイルを浮かべ、羽生くんが言う。先程までの彼の姿を知っている俺は、妙に白々しく見えて吹きそうになってしまった。

「ーーよく言うよ」

密かに呟いたつもりだったのに、聞こえていたらしく、王子がキッと俺の方を睨んだ。

ーーその時だった。

がたん、と割と大きな音が隣から聞こえてきて、俺は驚いて音のした方に顔を向ける。そんな俺の目に飛び込んできたものは。

「ーーうーん…………」

テーブルに顔を突っ伏して倒れる…………いや、気持ちよさそうに眠る

「えっ!? ちょっと、どうしたの!?」

同じ状況を目のあたりにしている羽生くんが、驚きの声を上げた。

「なんでかわからないけど、寝てる……」

隣で眠るを見ながら呆然としながら俺は言う。

テーブルに顔を伏せている状態ではあったが、顔は横ーー俺の方に向けられていた。なぜか頬と首筋はほんのり赤く染まり、心地よさそうに眠る

「なんで急に!? やばくない? 平野くんなんかした!?」

「ーーしてないし。俺もわかんない」

すると隣のテーブルから、こんな声が聞こえてきた。

「ちょっと、これスクリュードライバーじゃないよ。オレンジジュースじゃん」

隣のテーブルに付く客が店員に向かって不満げに言う。

ーースクリュードライバーって、確かウォッカとオレンジジュース割ったやつだよな。見た目はオレンジジュースみたいでかわいいけど、意外にアルコール度数高めの。

……まさか。

すると俺と同じことを思ったらしい羽生くんが、の飲みかけのオレンジジュース(らしきもの)のグラスを手に取り香りをかいだ。

「ーーあ、これお酒だ」

予想通りの羽生くんの言葉。どうやら店員が、隣のテーブルに置くはずだったスクリュードライバーと、俺らのテーブルの持ってくるはずだったオレンジジュースとを入れ違えてしまったらしい。

「そういえば、前に酒はあんまり飲めないって言ってた気が……」

そう、Xゲームの直前にスコッティに誘われた時に、確かそう言っていた気がする。だが、それにしても。

「にしても弱すぎじゃないの?」

羽生くんが呆れたように言う。いくら強めの酒とはいえ、コップ半分で意識を失うとは。まあ、の寝顔を見ると、夢見心地で眠っているように見えるので、そこまで心配はなさそうだが。

ーーだけど。

「ーーどうしよっか、これ」

俺が苦笑を浮かべて羽生くんに問いかけると、彼も同じような顔をして、「さあ」とでも言いたげに肩をすくめた。




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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

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