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2/15 平昌 選手村 No.2

 

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「ま、俺は取るけどね。金メダル」

「……昨日負けた俺に言うの、それ」

あまりにも容赦ない言葉に、吹き出しそうになる。俺たちのような立場でないと、言い合えない冗談に、俺は不覚にも少し楽しくなってしまう。

「でも怪我してるんじゃなかった? 羽生くん」

「あー、そうだね。まだ痛いけど」

「そんなんで取れんの?」

「……取るよ。俺を誰だと思ってるの? 平野くんは」

ーーそうだ。この人は絶対王者の羽生結弦。オリンピックで負ける姿なんて、誰も想像出来ないほどの。

「……ま、頑張れば」

「そうだね。金メダルも……もいただくからね」

「後半は同意できない」

「君に同意してもらう必要は無いんだけどね」

「……あ、そう」

いい加減に返事をする俺だったが、羽生くんは特に気にした様子もなく、食堂の時計に目を向けて時刻を確認すると、

「ま、あのスコッティとかいうやつなんとかしといてよ。……片山くんもね。俺は予定があるからもう行くから」

俺の返事も聞かずに、そのまま背を向けて食堂から出ていってしまった。

ーー全く嵐のような人だな。しかしどこか憎めない。さすがはリアル王子である。

さて。別に羽生くんの主張はどうでもいいけれど、いつまでもスコッティにを口説かせるわけにもいかない。いくらショーンがを庇い気味な立場にあるとはいえ。

俺はやおら彼らが着いているテーブルに近づく。するとショーンが俺に気づき、面白そうに笑いながら目を合わせてきた。ショーンの向かい合わせになっていると、その隣に座っているスコッティからは、俺は死角になっている。

「Hmm. I will ask you, but do you love Ayumu?(ふーん。それなら聞くけど、は歩夢を愛してるの?)」

少しむくれた声で、スコッティがそんなことを言い出していた。ショーンにいろいろ言われて不機嫌になっているようだが。

なんだよ、その質問は。

「What? Oh, love! What?(えっ!? あ、愛って!?)」

「Hey, what do you think?(ねー、どうなの?)」

「Of course she is determined to love him. Hey, you(もちろん愛してるに決まってるじゃないか。ね、)」

ショーンが俺の方をちらちら見ながら言う。あのおっさん……。

しかしの返答が気になるのも事実だった。すぐにこいつらの間に入ろうと思っていたけど、俺はしばらくの静観を決め込む。

「Oh, I do not love ... ... That is ... no, no, but I do not say I love you ... ... no, uh ......(あ、愛してない……わけでは……い、いや、でも、愛してるって言うのも……いや、えーと……)」

「Hey, which one are you?(ねー、もうどっちなのさー)」

「Let me ... ... Eh ... ... If I say something ... ... I love yo ............. It is already! What from a little while ago!(う……え、と……どちらかと言うと……愛して…………。ってもう! 何なのさっきからーー!)」

別に答える義理はないことに気づいたのか、が我に返りちょっと怒ったような顔をして声を上げる。スコッティはそんな彼女の様子を「ははは」と笑って見ていた。

ーーどちらかと言うと愛してる。

不要な枕言葉が付くけれど、聞きたかったな、の「愛してる」。ーーきっと、愛されていなくはないだろうから。たぶん。

「俺は愛してるよ」

そして俺は彼女の背後で、ゆっくりと、はっきりと言ってやった。

「ーーえ?」

振り返る。初めて俺の存在に気づき驚いたのか、目を開いて口をあんぐりと開けている。

そして俺の言った言葉を理解したのか、瞬時に顔を赤くした。全く本当によく赤くなるやつだなあ、は。

「Well, it's Ayumu. Since when.(げ、歩夢じゃん。いつからいたんだよ)」

スコッティが俺を見て顔をしかめる。するといやににやけたショーンが席を立ち、スコッティの腕を急かすように引っ張る。

「Hirahara, her husband came, so the obstructer is going home, Scotty(ほらほら、の主人が来たんだから邪魔者は帰るぞ、スコッティ)」

「What is it, bastard way, Shaun(なんだよー、そっちこそ邪魔すんな、ショーン)」

「Yes, I will go.(はいはい行った行った)」

いつになく強引なショーンにスコッティはしぶしぶ従い、席を立った。そして「ー、またねー」と、満面の笑みを浮かべてに手を振りながら去っていく。

しかし当のは、そんなスコッティに反応する余裕はなく、自分の膝の上で手を握りしめ、照れた顔で俺を横目で見ていた。

「ま、また歩夢くん、は……へ、変なこと言って……!」


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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