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2/15 平昌 選手村 No.1

 

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歩夢side

決勝から一夜明けた朝。俺は思いの外清々しい気持ちで目覚めることができた。

泣いたせいで瞼は少し腫れていたし、重いけれど。まあ、あの涙のおかげでこのすっきりとした気持ちになっているわけだが。

卓は相変わらず寝ているので、俺は簡単に身支度をして食堂に向かった。

「……ちょっと、平野くん」

すると入るなり、俺の姿を見つけた羽生くんが、彼に似合わない苦々しい表情で寄ってきた。

「は? 何」

「ねえ、あれなんなの」

羽生くんが目で示した方向には、ある3人が着いているテーブル。そしてその3人とは金メダリストのショーン・ホワイトと、銅メダリストのスコッティ・ジェームズと……なんとだった。

「……何あの組み合わせ」

「あれ、ショーンと銅メダルの人だよね? なんかさっきからあの銅メダルのオーストラリア人がにちょっかい出してるんだよ」

むすっとした顔をする羽生くん。俺は耳をそばだてて、例の三人の会話を聞き取ろうとする。

「I want you to come to Australia.It does not matter when he is off.The scenery is beautiful, so you should be able to take a lot of pictures.(来ればいいよ、オーストラリアに。歩夢がオフになったらでいいからさ。景色がきれいだから写真がたくさん撮れるよ)」

「But Ayumu will also do skateboarding.He may not have such a period of off.(いや、でも歩夢くんスケボーもやるかもしれないから……あんまりオフの期間ってないかも……)」

「Hey, Scotty. Do not annoy me her. She has a lover called Ayumu.(こら、スコッティ。あんまりを困らすなよ。には歩夢がいるんだぞ?)」

「So, they are not that kind of relationship. I wonder if she was saying that a while ago.(だから、2人はそういう関係じゃないよ、ショーン。さっきも言ってだろ?)」

「No, there is no such thing. I can tell by seeing.(いやいや、そんなわけないよ。見ればわかる)」

を口説くスコッティに、俺たちの関係を勝手に進行させて(別にいいけど)それを止めるショーンと、2人に挟まれてたじたじになっている……と、言ったところか。

なんか知らないけどショーンが牽制してくれているから大丈夫そうだが。

「……ああ、あのスコッティってやつものこと好きなんだよ。わりとマジで」

「はあ? ちょっと何それ」

「ちなみに片山來夢だよ」

「…………………そう」

俺の言葉に顔を引きつらせる羽生くん。あんな色気のない顔をしているのに、罪な女なのである、は。

「しっかしみんななんでなわけ? まあ、俺はが世界一かわいいと思ってるけど、別に顔だけ見れば他にかわいい子なんていっぱいいるでしょ」

世界一かわいいとか、本人がいないにしても、よくこうもあっさり言えるよな、この人は。なんか印象変わったな、今回。

まあ確かに羽生くんの言う通りである。スコッティも來夢も世界的な選手なのだから、女優やモデルと知り合い機会くらいあるはずだ。

ーーって、それは俺と羽生くんもじゃんか。

「さあ、知らないけど。アスリート好みなんじゃない? は」

投げやりに返事をする俺に、羽生くんは仏頂面を浮かべながら、こう言った。

「ちょっと、平野くん。他の人からちゃんとを守っといてよ。マネージャーとして雇ってるんだから、見張れるでしょ。……この状況、少し不本意だけど」

「……俺はいいわけ?」

「嫌に決まってる。でも100歩譲って、が誰かに取られるんなら平野くんがいい」

「なんで?」

すると羽生くんは、口角を上げて不敵な笑みを作った。

「俺から見て、君が1番かっこいいから。……俺の次に」

俺を褒めながらも、自信満々に自分を持ち上げる。さすがは氷上のプリンス。これくらいの気持ちでいないと、勝ち続けることは出来ないのだろう。

「はあ、どうも」

中途半端に賞賛された俺は、少々戸惑いつつも一応そう言った。ーーすると。

「ーーあ、ところで平野くん。銀メダルおめでとう」

羽生くんは俺を真っ向から見据えて言った。

「……ありがとう」

「惜しかったね。でも平野くんは素晴らしかったよ。金メダルでもおかしくなかった」

少し微笑んで彼は言う。お世辞だとか皮肉だとか、そう言った感情は見受けられない。彼が本心で紡いだ言葉だと俺にはわかる。

「……取りたかったなーでも」

この人の前で取り繕ったり強がったりするのは無意味な気がしたので、俺は苦笑を浮かべて名残惜しそうに言った。

すると羽生くんはちょっと意地悪そうに笑う。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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