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1/21,コロラド州 アスペン Xゲーム会場 no.1

 

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 私が期間限定の歩夢くんの通訳になった次の日。

 コテージで軽い朝食を済ませ、私と歩夢くんと来夢くんの3人は、競技で使うスーパーパイプがある場所に赴いていた。

 来夢くんは数日前から練習していたらしいけど、歩夢くんはコロラドに到着して初めてだ。しかも昨日からやる予定だったのに、1日伸びてしまった。

 さすがの歩夢くんも少しうずうずしていように見えた。昨日より少し、口数が多い。

 そして私は、通訳で雇われてるといっても競技直後のインタビューくらいしか正式な仕事はなく、今はまあ、ぶっちゃけ暇である。

 終日フリーの私に「もしよければ、練習見に来る?」と歩夢くんと来夢くんは誘ってくれて、私はついてきたのだった。

 まあ、昨日みたいにいきなりドイツ語で話しかけられる機会もないとは限らないし、雇い主の歩夢くんとなるべく一緒に行動した方がいいだろう。

 ちなみに、友基くんは出場する競技は違っていて、スーパーパイプではなくビッグエアというものらしい。彼は「あとで俺の練習も見に来てねー」と言って1人で行ってしまった。

 景色を写真で撮ることしか興味のない私。スノーボードの競技は、オリンピックか何かで少し見たことあるけど、あまり詳しくはない。

 パイプの縁の部分(リップというらしい)に私達3人は立っていた。まだ朝の早い時間だからか、他に練習している選手はいない。

――それにしても。

「高いー!」

 リップからボトムを覗き込んで私は身震いする。高さは何メートルあるだろうか。目視でも、恐らく5メートル以上はある。

ちゃん大丈夫? 最初はびびるよねー」

「なんとか大丈夫だけど、ほんとこの高さもう怖いわ…」

 気を遣ってくれる来夢くんに苦笑を浮かべて私は答える。

「怖いならもうちょい離れてもいいよ」

 ゴーグルをつけながら歩夢くんは言う。私と身長もそこまで変わらない、細身の彼。

 こんな巨大なパイプを、まだ少年のような彼が一体どのように滑るのだろう。

 気になって気になってしょうがない。私はできるだけ間近で見たい衝動に駆られる。

「ううん。ここでいい。近くで歩夢くんを見たい」

 私は彼を見つめて言った。ゴーグルに隠れてしまい、彼の表情を推し量ることはできなかったけれど。

「…そっか。じゃあそこで見てて」

「うん」

 すると、彼は軽い身のこなしで高所の恐怖などまるでないかのように、パイプの中へドロップインした。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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