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2/14 平昌 選手村 No.4

 

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歩夢side

ーーどうしてわかったのだろう。

おやすみ、とに言った時までは俺は大丈夫だったんだ。

大丈夫。メディアや周囲の人間に言ったように、負けは負けなんだから、俺はそれを受け入れる。

今日あった出来事なのだから、さすがに心の整理の全てが既についている訳では無いけれど、俺の精神を大きく蝕む問題ではない。少しの時間があれば、すぐに自分の中で割り切って、消化できる。

そう思っていたんだ。ーーが自分の部屋に入ってしまうまでは。

彼女の姿が見えなくなると、固めていた心に急に亀裂が入り出した。

ーー負けた。4年間、嫌なこともやって、たくさんの我慢をして、それでも五輪の舞台で頂点を取りたくて、生きてきたというのに。勝てる材料も、揃えていたというのに。

不意にそんな思いが溢れ出し、卓がすでに寝てるであろう部屋に入るのが、恐ろしくなった。

自分が壊れてしまいそうで。孤独が俺の全てを破壊してしまいそうで。

扉を開けたは、俺のそんな様子に驚いた素振りも見せずに、当たり前のように俺を部屋に入れた。

そして、目から負の感情を垂れ流す俺を受け入れーー当然のように唇を重ねた。

からのキスは、俺が普段彼女にそれをするときに醸し出すような、情欲やら背徳感のようなものは、一切内包されていなかった。

ひび割れてしまった俺を、修復してくれるような、包み込んでくれるような、暖かく、優しい口付け。

そしては、俺の涙が枯れるまで、ずっと俺のことをそっと抱きしめ続けた。そして最後に、こう言った。

「歩夢くんが1番、空に近かった」

俺はこの時、羽生くんの気持ちを心から理解した。ボロボロの時に「お兄ちゃんが1番かっこよかった」と言われた、彼の気持ちを。 だいたい理解していたつもりだったけれど、身をもって実感したのだ。

ーーこうして俺はまた、君から離れられなくなっていく。君という存在に、どんどんどんどんはまっていく。

決してもう、抜け出せないほどに。


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泰人

Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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