1/20,コロラド州 アスペン コテージ no.6
- 2018/03/19
- 17:05
Your name
なんだかその場に居づらくなって、俺は立ち上がってリビングから出る。「大会でいいとこを見せて告白だ!」と叫ぶ来夢の声と、「おやすみー」という友基の声を背後に聞きながら。
自分の部屋の前にたどり着くと、ちょうど隣の部屋からが出てきた。アウターを羽織っており、外出するような出で立ち。
「あ、歩夢くん。もう寝るの?」
「うん。…もしかして、どこか出かけるの?」
「あー、あのね。実は着替えのトップス買うの忘れちゃって。この辺売ってないかな」
周囲の状況を思い起こす。少し離れたところには、衣料品が売っている店があったはずだ。…しかし。
「もう夜だし、出歩くの危ないよ。それにもう店閉まってるかも」
「あ!そっか…うーん、どうしよ」
困る。そこで俺にある考えが浮かぶ。
「俺、着替え多めに持ってるからよかったら貸そうか? パーカーなら女の子でも着れるよね」
「え! ほんと! 助かる!」
ほっとしたように、明るく言う。花が咲いたような笑顔に、引きずられそうになるが、すんでのところで踏みとどまる。
「…取ってくるわ」
部屋に入りスーツケースから黒いパーカーを引っ張り出し、に渡す。
するとはアウターを脱ぎ、Tシャツの上からパーカーを被った。少し大きめなようで、手が裾に隠れてしまっているが、許容範囲だ。
「大丈夫そう! 歩夢くんが小柄でよかった」
「悪かったな、チビで」
「えー、ごめんそういう意味じゃないよー!」
「あはは、いいって」
「もう〜」
冗談を言いながらも、俺はの全身を見ていた。俺の普段着のパーカーにすっぽり包まれている。
――妙な気分になる。を征服しているようか、自分のものにしているような、そんな気分。
「歩夢くん?」
「…え、ああ。ごめんちょっと疲れてて」
数瞬、ぼーっとしてしまった俺にが首をかしげた。何やってるんだ、俺は。
「あ、ごめんね疲れてるとこ。もう寝るんだったよね。おやすみ! 私はお風呂入ってくる〜」
「うん、おやすみ」
明るく手を振って、俺に背を向けて廊下を歩き出す。その背中を見届けたあと、俺は小さく嘆息し、部屋に入る。
そしてベッドの上に身を投げた。
――その夜は、身体は疲れているはずなのになかなか寝付けなかった。
風呂上がりに俺のパーカー着て、そのままベットで寝ているだろうの姿が、頭に何度も浮かんできて。
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