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1/20,コロラド州 アスペン コテージ no.6

 

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「もう、寝るわ」

 なんだかその場に居づらくなって、俺は立ち上がってリビングから出る。「大会でいいとこを見せて告白だ!」と叫ぶ来夢の声と、「おやすみー」という友基の声を背後に聞きながら。

 自分の部屋の前にたどり着くと、ちょうど隣の部屋からが出てきた。アウターを羽織っており、外出するような出で立ち。

「あ、歩夢くん。もう寝るの?」

「うん。…もしかして、どこか出かけるの?」

「あー、あのね。実は着替えのトップス買うの忘れちゃって。この辺売ってないかな」

 周囲の状況を思い起こす。少し離れたところには、衣料品が売っている店があったはずだ。…しかし。

「もう夜だし、出歩くの危ないよ。それにもう店閉まってるかも」

「あ!そっか…うーん、どうしよ」

 困る。そこで俺にある考えが浮かぶ。

「俺、着替え多めに持ってるからよかったら貸そうか? パーカーなら女の子でも着れるよね」

「え! ほんと! 助かる!」

 ほっとしたように、明るく言う。花が咲いたような笑顔に、引きずられそうになるが、すんでのところで踏みとどまる。

「…取ってくるわ」

 部屋に入りスーツケースから黒いパーカーを引っ張り出し、に渡す。

 するとはアウターを脱ぎ、Tシャツの上からパーカーを被った。少し大きめなようで、手が裾に隠れてしまっているが、許容範囲だ。

「大丈夫そう! 歩夢くんが小柄でよかった」

「悪かったな、チビで」

「えー、ごめんそういう意味じゃないよー!」

「あはは、いいって」

「もう〜」

 冗談を言いながらも、俺はの全身を見ていた。俺の普段着のパーカーにすっぽり包まれている

 ――妙な気分になる。を征服しているようか、自分のものにしているような、そんな気分。

「歩夢くん?」

「…え、ああ。ごめんちょっと疲れてて」

 数瞬、ぼーっとしてしまった俺にが首をかしげた。何やってるんだ、俺は。

「あ、ごめんね疲れてるとこ。もう寝るんだったよね。おやすみ! 私はお風呂入ってくる〜」

「うん、おやすみ」

 明るく手を振って、俺に背を向けて廊下を歩き出す。その背中を見届けたあと、俺は小さく嘆息し、部屋に入る。

 そしてベッドの上に身を投げた。

 ――その夜は、身体は疲れているはずなのになかなか寝付けなかった。

 風呂上がりに俺のパーカー着て、そのままベットで寝ているだろうの姿が、頭に何度も浮かんできて。


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Author:泰人
昔いろいろ夢書いてました。

久しぶりに書いてます。

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